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9月第1週(8月30日~9月3日)の相場展望

2021-08-30

ワクチン接種が進んだことでコロナ感染者抑制となって、経済正常化の道を進んでいた米国経済だが、最近は変異種デルタ株の蔓延によって正常化の遅れ懸念が台頭しており、ホワイトハウスがFRB議長交代へ慎重姿勢を強めているようだ。またイエレン財務長官がパウエルFRB議長の再任を指示する方向と報道されている。FRB議長の時から米国経済運営に対して緩和的な立場を継続してきたイエレン財務長官は、近い考えを持っているパウエルFRB議長の再任後押しは理に適っている。現状でのこの動きで、ホワイトハウス側も正常化の遅れからFRB議長続投に合意する可能性が出てきている。今の状況で、民主党が推しているブレイナードFRB理事を据える方向性が強まると、パウエル議長と比較して早めのテーパリングを提言しているため、経済リスクは高まる傾向となる。またブレイナード理事は、デジタル通貨に相当前向きだというように金融業界の規制緩和を進めたい意向があり、また金融政策を用いた経済格差是正への支持者である。来年2月までが現在のFRB議長任期であるため、今年10月から年末にかけてFRB人事の方向性が定められるだろう。共和党派のパウエルか民主党派のブレイナードか、双方ハト派には変わらないが経済運営が異なるため、議長交代となれば相場への影響も大きいだろう。米国の中銀は独立していると言われているが、実際は政治と蜜に関わっている。

ここ数か月はドル高傾向となっていたが、ここにきて動きに変化が見られている。金価格の上昇とユーロドルの動きだ。ユーロドルは今年6月の1.2265の高値から下落トレンドを形成し、8月20日に1.1663の安値まで約640ポイント下落した。先々週末から反転を開始し、先週金曜日に下落トレンドラインを明確にブレイクし上昇気配を強めている。ユーロドルに次いで出来高の多い対ドル通貨であるポンドドルは、依然下落トレンドの下で推移している。米ドルの動きもまだはっきりとした傾向は出ずにいる。もしポンドドルがこの下落トレンドを上にブレイクしていけばドル下落が鮮明となると見ているから、その後加速が見られるかもしれない。

ユーロドル日足チャート


ポンドドル日足チャート


注目の先週末、ジャクソンホール中央銀行シンポジウムはコロナ禍でオンラインでの開催となった。全般にやや規模が縮小された内容に感じられる。その中で米国FRBのパウエル総裁がスピーチを行った。前回のFOMC後にテーパリング開始の合図を期待?待っていた市場参加者は先週ドル買いからポジション調整でやや売りが強まった動きだった。内容は、テーパリングは年内開始が適切としながらも明確な時期と具体的なペースに関しての言及がなされず、大まかな表現で終わったため、市場の予想を裏切ったようで週明けからドルが弱含展開となっている。ドル円は110円台から109円へ、ユーロドルは1.18ドル台で上昇し、株価は堅調推移となった。また金価格は大きく値を伸ばし、1800ドルを上抜けしている。

金価格は、大きな急落から徐々に値を戻し、アフガニスタンでのタリバン政権の動きやテロなどの波乱やジャクソンホール会合でパウエルFRB総裁の発言を受け1823ドル付近まで上昇している。1700ドル割れでは今年に入ってから3度止められており、反転上昇をした。6月からは上値も切り下げている形が続いていた。1820ドル近辺に75日移動平均線があり、一目均衡表の雲上限レベルが1833ドル付近で、2つのハードルがあり、この間では買い手からの利食いが出やすいだろう。日足チャートから、今年6月初旬からの下落トレンドラインを上にブレイクしていることも買い優勢の度合いを強めている。1834ドルから上は1865ドル付近まで大きな抵抗がないため、その間は動きが速くなると予想する。米国株はダウ、ナスダックともに史上最高値圏で強い相場を継続している。世界の株で下落が大きいのが中国株であり、その影響で香港のハンセン指数も上値が重い展開が続いている。日本もまたコロナ感染者の増大で上値を切り下げているチャートとなって、アジア株は相対的に弱い。もしここで米株が崩れると下値追いの売りが多く出てくる可能性があり、アジア株にとっては予断を許さない相場付きであることも金価格を支えている。

金の日足チャート


今週は、EU圏、ドイツ、フランスの消費者物価指数と米国の雇用統計に注目している。先週、米国FRB委員のウォーラー、ジョージカンザスシティー連銀総裁、メスタ―クリーブランド連銀総裁の面々は米国の雇用とテーパリング時期について言及し、「雇用改善が見られることで早めのテーパリングを前倒しすべきだ」という意見を発している。今回の雇用統計の結果は重要度が増しそうだ。
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