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国内投信市場動向:先進国株式への選好が継続

2021-08-25

■ 消去法で債券より株式への選好が高まるなか、特に先進国株式の安定性に着目か

■ 債券市場の低金利環境が続けば、国内投資家は先進国株式への資金集中を継続する見込み

   本稿では、5月から7月までの国内投信市場動向を振り返る。直近3カ月の合計は、約2兆6000億円の資金流入超だった。単独の資産クラスでは、海外株式へ投資するファンドへの資金流入額が約2兆円と資金流入の大半を占めた。他に、国内株式、国内債券、バランス型ファンドへ投資するファンドへの資金流入額が直近3カ月合計でそれぞれ1000億円を超えているが、海外株式への資金集中という、昨年の新型コロナウイルス禍以降の傾向に変化はない。
   さらにもう一段踏み込み、投資対象先の資金流出入を確認した場合、先進国株式に投資が集中している傾向の継続が確認された。直近3カ月間の先進国株式への資金流入額は概算で約2兆円の一方で、新興国株式へは約500億円の資金流出超となった。つまり、国内投資家の多数派は、新興国株式よりも先進国株式への選好姿勢を維持していると指摘できる。新型コロナ変異株の感染拡大懸念がくすぶるなか、新興国と比較した先進国の安定性が選好されているのではないだろうか。
    加えて、債券市場の低利回り環境が続くなか、先進国債券をポートフォリオに組み入れた場合、従来期待された株式投資のヘッジとしての役割が果たせないとの思惑が市場に浸透してきたことも大きな要因と考えている。Bloomberg Barclays指数で参照した主要債券指数の最終利回り(≒期待リターン)を挙げると、米国ハイイールド(以下、HY)社債は4.2%、欧州HY社債は2.5%、先進国投資適格社債は1.4%、米国債は0.9%となっている(8月20日時点)。高格付け債券は、今後先進国中央銀行の政策金利引き上げを巡る動向が注目されるなか、利回り上昇(=価格下落)の可能性が高いと見込まれる。また、欧米HY社債は国債との利回り格差が過去最低水準にまで縮小し、価格上昇余地が乏しい状況にある。結果として、消去法で債券より株式への選好が進むなかで、株式の中でも安定性の高い先進国株式への資金集中につながったと言えよう。したがって、先進国債券の低利回り環境が維持されるうちは、国内投資家の先進国株式への選好姿勢は続くと想定している。
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