News

中国経済:景気減速感が強まるが、構造改革を優先か

2021-08-19

■ 中国の経済指標は7月に大きく落ち込み、景気減速感が強まる

■ 中国政府は構造改革を優先し、政策支援は期待薄。さらなる減速時の下支え程度にとどまろう


   中国では、7月の経済指標の大半で増勢が鈍化し、景気減速感を強めている。16日に発表された7月の主要経済指標では、鉱工業生産(前年比6.4%増)、小売売上高(同8.5%増)、固定資産投資(農村部除く、年初来同10.3%増)の増勢が揃って大幅に鈍化。6月まで一定ペースで増加していた前月比でも伸び悩み、7月に入り減速が明確になっている。その他でも、輸出(前年比19.3%増)、輸入(同28.1%増)、マネーサプライ(M2、同8.3%増)、社会融資総量残高(同10.8%増)などの貿易・金融関連など、多くの指標が市場予想を上回る落ち込みを示し、同様の傾向がみられている。一方で、原材料価格高騰を受けて生産者物価指数(同9.0%上昇)は前月を上回る伸びが続いている。小売価格への転嫁が制約されるなか、国内外での需要鈍化と生産コスト上昇により製造加工業の苦境が強まっている。
   景気減速の原因には、半導体などの世界的な供給制約、複数の都市での新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う活動制限、河南省などでの洪水被害、中国政府による歳出の抑制や不動産投資規制など、複数の要因が重なったことが挙げられる。ただし、中国政府は2021年の成長率目標を「6%以上」と4-6月期(前年比7.8%)までの実績を大幅に下回る水準に設定し、高成長より安定成長を志向しているため、足元の景気減速への積極的な対応は期待しづらい。政策支援は減速感が一段と強まる場合の下支え程度にとどまると考えられる。
   中国人民銀行が7月15日より預金準備率を引き下げた一方、中国政府はハイテク・教育・鉄鋼産業などに対する規制・締め付けを強め、経済成長よりも格差解消、過剰生産、環境問題を優先する姿勢がうかがえる。構造問題への対応を進める背景には、米政権交代により過去数年の中心課題であった米中通商問題に関する懸念が和らいだこと、また、世界に先駆けてコロナ禍後の経済正常化が見込まれるようになったことが指摘できる。来秋の中国共産党全国代表大会での3期目の続投を目指し、長期政権を見据える習国家主席の思惑が透ける。
   なお、8月には米欧および中国と経済的関係の強い豪州で景況感の悪化が顕著となっている。新型コロナデルタ株の感染拡大が主因ではあるが、サービス業だけでなく製造業での悪化も確認されており、中国での景気減速が海外に波及しているのか見極める必要もある。

TOP