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新興国中銀:FRBとアジア地域の動向に注目

2021-08-17

■ 7月以降、新興国では欧州と南米で利上げを実施する中央銀行が増えている

■ FRBの動向次第で、アジア地域でも金融引き締めへ転換を図る中央銀行が増える可能性がある


   本稿では、7月以降の新興国中央銀行の動向を確認する。本稿執筆時点で、7月1日から8月13日にかけて15カ国(イスラエル、マレーシア、チリ、トルコ、韓国、インドネシア、南アフリカ、ロシア、ハンガリー、タイ、ブラジル、チェコ、インド、フィリピン、ペルー)の新興国中銀が政策会合を行った。このうち利上げを決定したのは6中銀だったが、連続利上げを実施したのは、ロシア(5.50%→6.50%)、ハンガリー(0.90%→1.20%)、ブラジル(4.25%→5.25%)、メキシコ(4.25%→4.50%)の4中銀。新型コロナウイルス禍以降で初の利上げとなったのが、チリ(0.50%→0.75%)、ペルー(0.25%→0.50%)の2中銀との内訳に。地域別でみると、6月の傾向と同じく、南米と欧州は「物価上昇抑制のため、一部中銀が利上げを実施」しており、新興国中銀の間では二極化の動きが一段と鮮明になってきたと言えよう。
   一方、アジア地域では引き続き、金融引き締めへ舵を切る中央銀行はみられなかった。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化していることに加えて、南米や欧州の新興国に比べて相対的に物価上昇圧力が緩やかであることが背景とみられる。ただし、インドネシアやフィリピン、インドなどでは、中央銀行が物価見通しを上方修正しており、通貨安とのバランスを考慮すると、金融緩和姿勢を維持するとの判断は難しい局面に入りつつある。また、韓国銀行(中央銀行)は8月3日に公表した7月政策委員会の議事要旨で、7人の政策委員の過半数が早期の金融引き締めが必要との認識だったことが明らかになった。アジアでも、一部で金融引き締めへ方向転換を試みる中央銀行が現れ始めたとみられる。
   今後の新興国中銀の金融政策姿勢を見極めるうえでも、8月26日から28日までの予定で開催される米国の年次経済シンポジウムでのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長講演に注目する必要があろう。仮にFRBが金融引き締め姿勢を明確にした場合、米ドル高進行のあおりを受け、新興国通貨安が進む可能性が高い。その場合、自国通貨安を防ぐため、アジア地域でも韓国を筆頭に、金融引き締めへ転換する中央銀行が徐々に増えると想定されよう。
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