FRBはテーパリングに向けた対話を本格化
2021-08-13
■ 7月27、28日のFOMC以降、FRB高官の発言の論調が明確に変化
■ 7月の米雇用統計にて雇用回復が確認され、テーパリング前倒しの蓋然性が高まっている
7月27、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、米連邦準備理事会(FRB)高官の発言の論調が変わり、資産購入の段階的縮小(テーパリング)開始に向けたコミュニケーションに本格的に着手しつつある。
変化が鮮明となったのは、8月4日のクラリダFRB副議長の講演以降である。同氏は、7月のFOMC以前までは早期の金融政策正常化に慎重な見解を示してきたが、4日の講演では、新たな金融政策の枠組みの下で、2023年には利上げ開始が望ましい環境が整うとともに、今年後半にもテーパリング開始のアナウンスメントが可能になるとの見通しを示した。
4日の講演以降、多くのFRB高官が発言し、認識や見解には個人差があるものの、テーパリング開始への慎重派も含めて「米経済の進展」がみられることはFOMC参加者の間でコンセンサスが形成されつつある。従来からテーパリングの必要性を主張してきたダラス連銀のカプラン総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁、セントルイス連銀のブラード総裁、ボストン連銀のローゼングレン総裁らは主張をさらに強め、開始時期など具体的な言及が目立つ。また、執行部の間でも、ウォラーFRB理事が6月と同等の雇用増が8月まで続くことを前提に9月のFOMCでの開始決定を容認。7月の米雇用統計にて非農業部門雇用者数が11カ月ぶりの大幅増加を記録したため、開始決定が今秋に前倒しされる蓋然性が高まっている。クラリダFRB副議長は4日の講演にて、テーパリング開始の判断についてデータを重視する方針を表明し、特に今後数カ月の労働市場の動向を一段と注視することを明言している。今後数カ月間は、雇用関連指標の結果がテーパリングに関する意思決定に直結すると考えられる。
金融市場では、テーパリングを織り込む動きがみられ、これまで低下基調にあった米長期金利が上昇に転じ、外国為替市場ではドル高が進行している。ただ、現時点では、2013年に生じたような混乱はみられていない。新興国市場をはじめ、海外への波及効果も大きいため、このまま波乱なくテーパリング開始を迎えることが出来るのか、FRBのコミュニケーションの真価が問われる最も重要な局面に差し掛かりつつある。