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米雇用統計レビュー:堅調との評価だが、気になる点も

2021-08-11

■ 7月の米雇用統計は、総じて堅調な結果と金融市場では評価されている

■ ただし、NFPでは新型コロナ禍における季節調整が波乱要因となりうる状況は継続


    8月6日に米労働省が発表した7月の米雇用統計は、米労働市場の回復度合いを印象付ける結果となった。非農業部門雇用者数(以下、NFP)は、季節調整後で前月比94.3万人増と、市場予想(同87万人増)を上回ったうえ、前月分も同85万人増から同93.8万人増へ上方修正された。失業率は前月の5.9%から5.4%へ、不完全雇用率(U6)は前月の9.8%から9.2%へ大幅に改善した。また、時間当たり平均賃金は前年比4.0%上昇と、前月(同3.7%上昇)から伸びが加速。金融市場では、米国株上昇・米金利上昇・米ドル高の反応をみせた。
   一点気になる点では、季節調整前のNFPを挙げたい。7月は前月比13.3万人減と、NFP全体の季節調整後との乖離は107.6万人と大幅になった。引き続き新型コロナウイルス禍による季節調整への影響が大きい状況にある点は、認識しておく必要があろう。ただし、今回の季節調整の大幅な乖離については政府部門に限られており、特に春先に雇用水準が低かった教育関連雇用の季節調整が主因とされる。政府部門は季節調整前が同91.2万人減であるのに対して、季節調整後は同24万人増と、季節調整の乖離が115.2万人に及んだ。一方、民間部門の雇用者数を比較すると前者が同77.9万人増、後者が同70.3万増と季節調整の乖離は小幅にとどまる。そのため、レジャー・娯楽関連(同43.9万人増、同38万人増)がけん引する形で金融市場では「米労働市場は順調に回復」との評価が保たれ、季節調整の乖離については材料視されなかった。米国での新型コロナ変異株の影響は、現時点で一時的との解釈となろう。
    堅調な結果だったとはいえ、今回の結果だけで米連邦準備理事会(FRB)の金融政策スタンスに決定的な影響を与えるとは考えにくいだろう。中期的な観点からは8月6日のPRESTIA Insight「7月の米雇用統計について」で示された通り、複数の米連邦準備理事会(FRB)高官の発言を受けて、次回以降の米雇用統計の重要度が増すことになったとの判断を維持する。
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