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原油価格の下押し圧力とは

2021-08-09

■ 原油価格の下落要因その一、OPECプラスの減産縮小決定

■ 原油価格の下落要因その二、コロナデルタ株の拡大


    原油相場の国際的な指標であるWTI先物価格(期近物・終値)は7月前半に約2年9カ月ぶりの高値となる1バレル75ドル台にたびたび乗せたが、その後は軟調な展開となり、足元では70ドルの節目を割り込んでいる。この背景には主に2つの大きな要因が存在している。
    まず、一つ目の要因としては、7月中旬に「OPECプラスによる減産縮小」が決定したことが挙げられる。当初7月1日開催のOPECプラス閣僚級会合において8月以降の減産方針を決定する手はずであったが、UAEの反対1によって協議が難航していた。しかし、同月18日に開催された臨時会合でようやく合意に至り、(1)(7月時点で日量580万バレル規模となっている)減産を8月以降に毎月日量40万バレルずつ段階的に縮小して2022年9月末までに終了するように努めること、(2)OPECプラスの減産枠組みを2022年末まで続けること、などが決定された。
    7月の決定に関して、市場では「8月の減産規模を日量50万バレル前後縮小する」や「8月以降数カ月間緩やかな減産縮小を行う」といった予想が大勢であったため、予想を大幅に超える長期の減産縮小方針が示されたことになる。さらに、このペースで減産縮小を続けた場合、来年には世界の原油需給が供給過剰に転じる可能性が高いことから、先々の需給緩和観測が価格下落要因になったと考えられる。
   そして、もう一つの大きな要因が主要国でのコロナ感染再拡大だ。欧米主要国では、6月にかけてワクチン接種の進行と歩調を合わせる形で新規感染者数が減少基調となっていたが、7月に入ってからは感染が再拡大した。主因は従来型よりも感染力の強いデルタ株の感染拡大だ。中国でも最近では感染の拡大が目立ってきている。さらに、デルタ株を中心とするコロナの感染拡大を受けて、一部の国や地域では、これまで経済再開に向けて緩和してきた規制措置を再び強化する動きが出ている。
   こうした動きを受けて、「ワクチンの普及による経済活動正常化によって原油需要が回復に向かう」というシナリオに疑問符が台頭し、原油価格の下押し圧力となった。
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