米金融機関の融資残高が増加に転じる可能性
2021-08-05
■ 米金融機関の融資基準は一段と緩和し、企業からの融資需要は増加
■ 堅調な増益基調が示唆され、株価は下支えされよう
米連邦準備理事会(FRB)は2日、最新のシニア・ローン・オフィサー・サーベイを公表した。これはFRBが米金融機関に対して3カ月前と比較した融資基準や資金需要などの変化について四半期ごとに聞き取り調査を行うもので、調査対象となる金融機関は6月21日に調査票を受け取り、7月1日までに回答した。これによれば、大・中企業(年間売上高5千万ドル以上)向け融資基準DI(全回答に占める厳格化の割合-緩和の割合)はマイナス32.4と前回4月調査(マイナス15.1)から大幅に低下しており、融資基準は一段と緩和された。また、融資需要DI(全回答に占める需要増加の割合-需要減少の割合)は5.6と前回4月調査(マイナス6.9)から上昇し、5四半期ぶりにプラスに転じた。米主要金融機関の融資残高は減少傾向が継続していたが、今後は増加に転じることが期待される。そうなれば、余資運用として活発化してきた金融機関による米国債投資が落ち着き始める可能性があろう。
また、融資基準DIは設備投資や鉱工業生産、新規雇用の先行指標として有効に機能してきたほか、企業の営業利益率に対して概ね3四半期の先行性が確認されており、来年前半の企業利益が下支えされることを示唆している。市場では、S&P500株価指数構成企業の一株当たり利益(EPS)に関して、今年が約41%増、来年が10%増と増益基調が見込まれており(8月2日時点)、堅調な企業業績が株価を下支えする構図が当面保たれると想定している。