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米政府債務上限問題:9月以降に持ち越す可能性が高い

2021-08-04

■ 米国では政府債務上限の適用停止措置が終了したが、議会は対応を一時棚上げの様相

■ 米財務省の特例措置発動などを見越し、金融市場の警戒が高まるのは9月半ば以降か


    本稿では、米国の政府債務上限問題(以下、本問題)について確認する。米国では、2019年8月に決定された2年間の債務上限の適用停止措置が今年7月31日に終了し、現行の債務水準である28兆5000億ドルに上限が設定された。一方で、本稿執筆時点の米議会は、上院で超党派のインフラ投資計画の審議が白熱しており、本問題は一時棚上げの様相。米議会は8月8日からの夏季休会入りを延期する可能性はあるものの、債務上限の停止期間再延長などの対策がどのタイミングで講じられるか不透明感は強い。2011年8月には、本問題に関連して米大手格付会社が米国債の格下げを発表し、金融市場は混乱をきたしていることから、注視すべきイベントの一つと言えよう。
    米議会予算局(CBO)は、本問題に関連して7月21日に分析*1を示した。まとめると、米議会が対応しなかった場合、米財務省が複数の特例措置を活用しても、米政府の資金は今年10月か11月に枯渇するとの見通しだ。こうしたなか、イエレン財務長官は7月23日に議会へ提出した書簡の中で、一段と悲観的な見通しを示している。特に、直近では新型コロナウイルス禍を巡る措置に伴い政府の資金支払いと受け取りを巡る不確実性は高く、「財務省として具体的な見通しを示すことができない」とした。具体的に「10月1日だけで1500億ドル(約16.6兆円)の政府資金が減少する」と例を挙げるなど、米議会へ早急な対応を求めている。
    本問題では短期国債の発行減少を通じて、最初に米短期金融市場に影響が及ぶとみられる。ただし、それを含めても、現時点で金融市場の反応は軽微であると解釈できよう。9月半ばに四半期に一度の法人税支払い期日を控えるため、米財務省の特例措置発動を見越したうえで、9月中に政府資金が枯渇する可能性は低いとみている市場参加者は多い。米議会の夏季休会も相まって、8月中はジャクソンホールでの年次経済シンポジウムなど、米金融政策関連のイベントに対する注目度の方が高いとみられる。本問題への注目が高まるのは、米議会の夏季休会明けとなる9月以降の見込み。
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