景気のピークアウト、一時的インフレは表裏一体の現象
2021-08-02
■ 4-6月期の米実質GDPは2003年以来の高成長となった。今後は成長鈍化が見込まれる
■ FRBは高インフレを一時的と主張するが、成長率、インフレ率ともに鈍化は自然な現象である
4-6月期の米実質GDP成長率(前期比年率6.5%)は、2四半期連続で成長ペースが加速した。昨年のコロナ禍直後の反動増(2020年7-9月期:同33.8%)を除けば、2003年7-9月期以来の高成長を記録し、金額ベースでもコロナ禍前の水準を上回った。もっとも、Bloombergによる専門家の予想平均値では、7-9月期をピークに成長鈍化(7-9月期が同7.1%、10-12月期が同5.0%)が見込まれ*1、株式市場を中心に、米景気のピークアウトに対する懸念が浮上している。経済再開による繰延需要(ペントアップデマンド)が一巡することに加え、製品価格の上昇により自動車、建設資材など耐久財の売り上げが落ち込んでいること、素材、中間財の価格上昇および供給網に目詰まりが生じていること(ボトルネック効果)、失業給付の特別加算により一部の低賃金業種で人材採用が困難になっていることなど、景気回復を阻害する複数の要因の影響が表れ始めていることが主な理由である。
一方、27、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、米連邦準備理事会(FRB)の経済、物価認識に大きな変化はみられず、インフレ加速を一過性の現象とする従来の見解が据え置かれた。パウエルFRB議長の会見原稿には、その根拠として、経済再開後の需要急増に伴って価格が押し上げられたことや、一部製品の供給が滞り生産遅延が生じていることが挙げられている。足元の物価上昇はFRBの見通しを上回るペースで進行している。FRBは、特に後者の影響により物価が高止まりする可能性を認め、6月の「経済見通し概要(SEP)」では2021-23年の物価見通し(中央値)が引き上げられた。ただ、これらの影響が弱まれば、長期的な物価見通しに戻るとの見解は変わらず、現状、インフレの常態化はFRBのリスクシナリオにとどまる。なお、6月まで物価上昇要因の最上位に挙げられていたベース効果(前年の低い水準を基準とした上昇率であること)は今後、徐々に弱まることが見込まれる。
以上のように、米景気のピークアウト懸念と一時的なインフレ加速の原因の多くは共通する。成長率、インフレ率はともに政策的に押し上げられたため、持続可能な水準ではなく、ピークアウト後も引き続き、潜在成長率やインフレ目標を上回る。いずれも鈍化は自然な現象であり、急激な変動ではない限り、過度に警戒する必要性は低いだろう。