FOMCレビュー注目点
2021-07-30
■ テーパリングに向けた議論の進展が示されたが、早期利上げ観測が高まらないよう配慮
■ 8月下旬のジャクソンホールシンポジウムにおける議長講演に注目
前日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文では、新型コロナウイルスの新規感染者が増加しているにもかかわらず、米経済は引き続き順調に回復していると判断され、インフレ上昇圧力は一時的な要因に基づくとの認識が改めて示された。そのうえで、昨年12月のFOMCで示された、最大雇用と物価安定の目標に向けて「さらに著しい進展がみられるまで」資産買い入れを維持する姿勢について、今回の声明文では「経済はこれらの目標に向けて前進しており、委員会は今後複数の会合で引き続き進展を評価する」との文言が加えられた。資産買い入れの段階的縮小(テーパリング)開始に向けた議論が進展していると考えられる。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長はFOMC後の記者会見で、声明文と同様の見解を示しつつ、雇用と物価の目標達成には程遠く「利上げを検討するにはなお長い道のりがある」と述べた。テーパリング開始に向けた議論の進展により、早期利上げ観測が高まらないよう配慮していることがうかがえる。今回のFOMCを受けた金融市場の反応は限定的で、FOMCの情報発信に対して市場は概ね納得感を持って受け止めたと思われる。
なお、議長は米国債と住宅ローン担保証券(MBS)を同時に縮小すると予想していることを明らかにした。住宅市場の過熱に対処するためMBSの買い入れを先行して縮小するとの一部で浮上していた思惑は打ち消された模様だ。また、パウエル議長は記者会見のなかで、8月26-28日に開催されるジャクソンホールシンポジウムにおける講演の原稿を執筆していると述べた。議長講演が行われることが明らかとなり、テーパリングの開始時期や方法について情報発信がなされるか注目される。