News

南アフリカランド:新型コロナと暴動の影響が重しに

2021-07-28

■ 南ア中銀は政策金利を据え置いたが、来年にかけて利上げへ転じる可能性も示唆した

■ 目先、新型コロナ感染第3波と暴動の拡大による影響が、一段のランド安につながる可能性も


   本稿では、7月22日に開催された南アフリカ中央銀行(以下、南ア中銀)の金融政策決定会合の結果と、南アフリカランド(以下、ランド)の見通しを確認する。南ア中銀は、7月の政策会合で主要政策金利であるレポレートを3.5%で据え置いた。5月の政策会合と同じく、5人の委員による全会一致で決定した。ほかには、南ア中銀の四半期予測モデル(=QPM、Quarterly Projection Model)では今年の10-12月期の利上げ実施が示唆された一方、今年の年末時点の政策金利見通しは5月会合で示された4.07%から3.79%に引き下げられた。
   直近では、6月上旬にかけてのランド高が一服した後に、悪材料を受けてランド安基調へ転じている。具体的には、(1)新型コロナウイルスの感染第3波継続、(2)暴動の拡大、の2点に注目したい。(1)では、6月26日時点で1日あたり新規感染者数が約1.8万人まで増加し、南ア政府当局は7月12日に警戒レベルを5段階中4段階目に引き上げた。感染第3波に伴う景気への悪影響が嫌気され、ランド安が進行した。(2)では、7月9日に警察当局に収監されたズマ前大統領の支持者による暴動が挙げられる。7月11日に首都ヨハネスブルクのあるハウテン州で始まった暴動はクワズールー?ナタール州にも拡大し、アパルトヘイト以降で最大規模にまで発展したとみられる。両州の経済規模は南アのGDP全体の半分以上に及び、ランドの先行き不透明感につながっている。
   今回の政策会合で南ア中銀は、2021年の経済成長率を4.2%、2022年を2.3%で据え置いたが、以上の2点が景気とランド相場の重しとなる見込み。また、南ア中銀はインフレ目標を「3-6%」と設定しているが、2021年の物価上昇率見通しを4.3%へやや上方修正、2022年の見通しを4.2%へやや下方修正した。6月の消費者物価指数上昇率は前年比4.9%と、30カ月ぶりの水準に達した前月(同5.2%)から伸びが鈍化したものの、高水準を維持している。当面は景気への配慮から金融緩和姿勢の維持が見込まれようが、新興国市場全般の不安定感が徐々に意識されるなか、ランドは対ドルで週足一目均衡表の雲下限が通る15.6115ランド、対円で200日移動平均線が通る7.2671円付近をメドに、一段と売り優勢となる可能性もある。
TOP