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バイデン政権と二つのⅭ

2021-07-23

■経済復活するもコロナ変異種に懸念

■後戻りはない米国の気候変動対策


   1つ目のCは「COVID」。バイデン政権の成否を左右するのはコロナ禍対策といっても過言ではない。そのため、これまでバイデン政権は最優先課題として取り組んできた。1.9兆ドルのコロナ対策「米国救済計画」を政権発足から2か月も経たない2021年3月に成立させ、短期間にワクチンを全国で広め、感染者数低下および経済復興に導いたバイデン政権は評価に値する。
   だが、若者や共和党支持者などを中心にワクチン接種者数が伸び悩んでいる状況下、ワクチン接種率が低い地域で今秋から今冬にかけて局地的にデルタ株をはじめとする変異種の感染が拡大するといった懸念は残る。直近では一部の国でデルタ株感染拡大により、コロナ対策に関わる規制の再強化の動きが散見されるようになっている。米国でも局地的といえども経済再開が妨げられる潜在的リスクを在米企業は注視する必要があろう。
   2つ目のCは「Climate Change」。トランプ前政権からバイデン政権に交代して、政策面で最も大きな変化が見られるのが気候変動対策であろう。気候変動を否定していた前政権とは打って変わり、バイデン政権は全ての政府機関が気候変動問題を優先課題として位置付け、一丸となって対策に乗り出している。バイデン大統領は政権発足の初日にパリ協定復帰の大統領令に署名。そして、4月の米国主催の気候変動サミットではパリ協定の倍近い大胆な温暖化ガス排出削減目標を打ち出した。2030年までに温暖化ガスを2005年比で半減させるといった目標は、世界でも英国に次ぐ削減幅であり、かなり積極的だ。
   だが、米国が1997年の京都議定書、そして直近のパリ協定のいずれをも内政理由から実質破棄したことからも、将来にわたって米国は公約を堅持できるのかという疑問は残る。これはジョン?ケリー大統領特使( 気候変動問題担当)が諸外国から頻繁に聞かれる質問だという。バイデン政権が議会共和党と交渉しているインフラ法案「米国雇用計画」にどこまで気候変動対策を盛り込むことができるかが公約実現の上でも重要となるであろう。仮に11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)開催時までに、気候変動問題で強力な対策を同法案に盛り込むことにバイデン政権が失敗すれば、いくら「米国が戻ってきた(America is Back)」とバイデン大統領が訴えても信憑性は低い。米国の気候変動対策の本気度に各国が懸念を抱けば、米国がCOP26で主導権を握り、中国をはじめ他国に対して気候変動問題における協力を要請することは困難になろう。
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