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日銀金融政策決定会合レビュー:影響は限定的か

2021-07-20

■ 日銀は金融政策の現状維持を決定し、経済/物価見通しの修正と気候変動への取組方針を公表

■ 総じて金融市場への影響は限られ、金融緩和縮小へのハードルが高いとの見方に著変はない


    本稿では、7月15日と16日に行われた日本銀行(以下、日銀)の金融政策決定会合の結果を確認する。市場予想通りに金融政策の現状維持が決定されたが、併せて、今回の政策会合では「経済?物価情勢の展望(以下、展望リポート)」と、「気候変動対応を支援するための資金供給(以下、気候変動オペ)」の骨子素案が公表された。
   展望リポートでは、4月時点と比較して2021年度と2022年度の見通し中央値が修正された。実質GDPは2021年度が+4.0%から+3.8%へ下方修正の一方、2022年度が+2.4%から+2.7%へ上方修正。消費者物価指数(除く生鮮食品))は、2021年度が+0.1%から+0.6%へ、2022年度が+0.8%から+0.9%へ、それぞれ上方修正された。実質GDPの修正は、新型コロナウイルス感染症の影響が大きい。ただし、新型コロナウイルスワクチン接種の進展に伴い経済成長率見通しを上方修正した欧米と比較すると、7月に東京都で4度目の緊急事態宣言が発出されるなか、依然ワクチン接種率はG7内で最下位と出遅れている日本との違いは明確になったと言えよう。物価見通しの上方修正は、エネルギー価格上昇の影響と携帯電話通信料引き下げの影響の剥落を受けたものだが、2023年度にかけて物価目標の達成が困難な状況は変わらず。経済?物価のリスク要因の1点目でそれぞれ「新型コロナウイルス感染症の影響」と指摘している通り、日銀が先行きの大きな不確実性に目を凝らす時間帯は続く。
   気候変動オペは、貸付期間を原則1年とし年内をメドに開始、2030年度まで実施する予定とした。ただ、貸付利率は0%で付利金利の導入が見送られたうえ、円貨のみの貸付であり、現時点で金融機関に利用を促す動機付けは小さいだろう。また、同時に公表された「気候変動問題に関する日本銀行の取り組み方針」では、日銀が保有する外貨資産に外貨建てのグリーン国債等を加えると明言したものの、その際に追加で外貨買いのフローが発生する可能性は低いとみられ、為替市場への影響は限られる見込み。
   総じて、今回の金融政策決定会合での決定が金融市場へ与える影響は限られ、他の主要先進国に比べて金融緩和縮小へのハードルが高い状況は続くと考える。金融政策の方向性の違いを背景として、為替市場で緩やかな円安地合いが続くとの筆者の見方に著変はない。

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