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割高感が薄れてきた日本株

2021-07-15

■ 日本国内外の要因を背景に、企業業績の見通し改善が株価に十分反映されていない

■ 割高感が薄れ、出遅れを取り戻すだけのエネルギーがたまっているように感じられる

    欧米の主要株価指数が過去最高値付近にあるなか、日本株の伸び悩みが目立っている。日米欧の主要株価指数の年初来上昇率を確認すると、米S&P500株価指数は16.3%、ストックス欧州600指数は14.7%に対して、東証株価指数(TOPIX)は6.0%である(7月9日時点)。同期間における同指数の向こう1年予想一株当たり利益(EPS、Refinitiv集計の市場予想コンセンサス)増加率は、米国が23%、欧州が21%、日本が25%と、日本が欧米を凌駕している。高値警戒感や米金融政策の方針転換などが意識され、企業業績の見通し改善が株価に十分反映されていない構図は日米欧で共通しているものの、日本株の出遅れは際立っている。その要因を国内外に分けて整理すると、海外要因としては、米国で景気拡大ペースのピークアウトや中国の景気減速に対する懸念などが挙げられ、世界の景気敏感株と認識される日本株には逆風となっている。また、国内要因としては、新型コロナウイルス感染の再拡大やワクチン接種の遅れにより経済再開への期待が後退したほか、内閣の支持率低下など政治的不透明感が漂い始めたことが指摘できよう。

   株価水準を予想EPSと株価収益率(PER)にシンプルに分解して考えると、株価上昇率がEPSの増加率より小さい場合、PERは低下する。同期間における予想PERの低下率をみると、欧米が約6%にとどまる一方、日本は14%である。TOPIXの予想PERは新型コロナウイルス感染の拡大に伴う積極的な金融?財政政策により押し上げられ、2013年から2018年には上限となっていた16倍を上抜け、2020年9月以降は18倍付近まで上昇する局面もあった。それが足元では15.4倍と、新型コロナ禍前の2018年1月以来の水準まで低下している。割高感の解消が欧米に先行して進んでいるともいえ、ワクチン接種ペースの再加速などをきっかけに出遅れを取り戻すだけのエネルギーがたまっているように感じられる。
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