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2021年7月第3週(14-18日)の相場展望

2021-07-12

先週は、米国雇用統計の流れからドル高への調整で動きが拡大した。米国の6月ISM非製造業指数が鈍化したことで、ドル売りの流れが強くなり、FOMC議事録発表後にもドル売りは継続し、ドイツのZEW景況感指数や鉱工業生産の悪化などを受けて、米国長期国債利回りが低下し続けていることと、日本のSQ算出日を挟んで仕掛けも入り、ドル安が進んだ。ドル円は111円台から109円中盤まで下落した後、110円を挟んでの取引となっている。米国10年債利回りは、昨年3月以降では最長の8日連続の下げとなった。米国でインフレ懸念が台頭し、5月には大きく債券相場が崩れたが、FRBの金融緩和が継続するという意図にも関わらずの下げで市場が懸念しているのは、直近が世界的な景気のピークであり今後景気が悪化してくるというということ。インフレにも関わらず、需要が伸び悩むとスタグフレーションをも想定している投資家が出てきているということでもある。

日本のSQに向けてリスクオフで株式に大きな売り仕掛けが入った感じがしている。木曜日に香港のハンセン指数が大きく下げ、翌日が日本のSQ算出日に向けて引け後も大きく下げた。金曜日の日中での動きは先日から見ると、1000円程度の上げ下げをしている、特に金曜日の午後からは7時間で約1000円の戻り上昇となった。新安値銘柄数が400銘柄以上と信用の売り残が増加したことで短期的には売りすぎの指標が幾つも出ていたのに下げていたところで戻した。日本株単独の要因としては、昨日の約3000億円に続いてETFの分配に伴う換金売りが約5000億円出るとみられ、きょうの大幅安はやむを得ないとみられるが、その相場に乗った売買をした外国人は、大きな売買を手掛けていたのだろう。凄いボラティリティの伸びである。この日本SQの前後でも動きで稼ぐのもチャンスである。FXが動かないまたは金相場が静かなときは、ボラティリティが大きな株価インデックスで売買することも一考であろう。世界的に金利水準が低い時は、株価の動きが大きく、FXの動きは金利差が縮小ということで動きが限定されてしまうのが相場の常である。

このところコロナ感染者数はワクチン接種の伸びと反比例して下げ基調になっていたが、変異株の割合が増えており、英国ではワクチン効果が万全ではないとする意見も出ており、1日辺りの感染者数が6万人から一時1000人まで急減していたが、直近では再度3万人まで急増している。米国金利低下は世界的な変異株の伸びを懸念していることも加味されているのではないか。コロナでも変異株の種類が増加し、徐々に感染力を強めている。インド型のデルタ株、またデルタプラス株やペルーにはラムダ株など様々な種類の変異種がワクチン効果を減退させることが可能であり、今後の動向にも目を配る必要がある。日本も先週、オリンピックを目前に東京で緊急事態宣言の発動なっている。更に先週末のG20会議でも変異種への懸念を共同声明に入れて採択している。こういったコロナ変異種の先行き不透明さが世界公的マネーの米国債戻り売りに繋がっており、米国長期金利が低下している要因ともなっている。

米国10年債利回りはチャートの節目である1.3%を割り込んだ後、急速に戻している。10年債利回りは1.3%がどうやら一つの目途となりそうだ。ここからまた下げるとなるとマネーが株式相場の上昇を促して過熱感が生まれてしまう。1.3~1.4%でのもみあいを想定している。それに伴ってドル指数は直近高値から下落しており、テクニカルでのレンジ相場を示唆している。ドル円は1.3%割れのタイミングで109円台へと下げたことで、1.3%=110円の連動性がありそう。

またユーロに関しては、先週ECBの6月理事会の議事録によると、当局者は経済回復が加速する中で金融緩和策を縮小することを協議したが、最終的には緩和的な政策を維持することで「大筋で合意」した。ECBは前日、戦略見直しの結果、中期的なインフレ率目標を「2%」に変更すると発表。これまでの「2%に近いが、それを下回る水準」を改め、物価の一時的な上振れを容認する方針を示した。このことがユーロをサポートし、ユーロドルは下げからやや戻しへ切り返している。チャートからは昨年の11月からの三角持ち合いが形成されており、先週の安値1.1780付近が下値の目途となってそのレベルで下げ止まったことで、未だこの持ち合い相場は有効だと考える。均衡型の三角持ち合いが始まってから上下ラインには4回目のタッチとなり、徐々に値幅が縮小している。三角持ち合いは5波動を基本の形としており、次の上昇で上値ラインを突破していくのか?それとも再度下落して下のラインを抜けるのかで方向性が出やすくなる。5回を達成しなくとも、4回目でのブレイクでの影響も幾らかはある。ユーロドルは今回の下落幅の38.2%を戻すと下値不安が無くなり上げ基調の公算が大きく、1.1966のそのレベルを達成するかに注目したい。再度下落して安値をしっかりブレイクするとこの三角持ち合いが終了し、下落トレンドへ移行する可能性があるので気を付ける必要があるだろう。

ユーロドルの日足チャート



今週は米国パウエルFRB総裁の議会証言や地区連銀報告のベージュブックがある。先週10年長期金利が1.3%割れとなって予想外の低下をしたため、金融政策への言及からの市場の動きに注目。また米国債券は比較的大きな額で入札が予定されており、総額で1200億ドルとなっている。これらから、10年債利回りが1.3%付近で下値を固めることが出来るのかどうか。6月の消費者物価指数も米国で発表され、インフレ懸念が再燃するのか気になるところ。日本では日銀の金融政策決定会合が行われるが、大きな政策変更が期待できないことで円への影響は限定的であろう。世界的な過剰流動性相場は継続しそうで、米国企業決算が本格化し、自社株買いが過去最高のペースに達する勢いである米株のナスダック高値更新継続からダウ平均の高値更新へも期待されており、リスクオン相場が表面化すると金価格の上値を重くする可能性は高くなってくる。
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