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米雇用統計レビュー:単月では強弱まちまちとの解釈に

2021-07-06

■ 6月の米雇用統計の結果を受けたFRBの利上げ実施時期を巡る思惑への影響は軽微だった

■ 従来通り、完全雇用の達成に向けた歩みは継続しているとの見方に著変はない


   本稿では、7月2日に発表された6月の米雇用統計の結果についてまとめる。非農業部門雇用者数(NFP)は季節調整後で前月比85万人増と、市場予想(同70万人増)や前月(同58.3万人増:改定値)を上回り、昨年8月以来の増加幅となった。ただし、新型コロナウイルス禍前の2020年2月時点と比較すると、NFPは約676万人(季節調整後ベース)下回っており、現時点で米連邦準備理事会(FRB)が検討する「労働市場の著しい改善」には、道半ばと言えよう。また、失業率は5.9%と前月(5.8%)から上昇し、改善が見込まれていた市場予想(5.7%)に反して悪化した。なお、広義の失業率(U6)については9.8%へ低下し、15カ月ぶりの水準へ改善している。平均賃金は、同3.6%上昇と前月(同1.9%上昇)から伸びが加速したものの、市場予想(同3.7%上昇)は下回った。総じて、単月では強弱まちまちな結果との解釈が市場に広がり、FRBの利上げ実施時期の見通しへの影響は軽微にとどまった。
   ここでは別の視点として、季節調整前のNFPの推移について考察してみたい。通常、NFPのヘッドラインとして市場参加者が注目するのは、季節調整後の数値である。NFPでは、各業種の季節調整値を算出したうえで、全体の季節調整値が導き出される。ところが、今年に関しては通常の季節調整に加えて、昨年の新型コロナ禍を受けた影響が残るため、従来以上に季節調整後のNFPへ与える影響が大きくなっている可能性が指摘されている。そこで今年1月以降の季節調整前NFPの増減を振り返ると、概ね毎月100万人の増加ペースを維持(6月は114.7万人増だった)しており、2020年2月時点のNFPに比べて約445万人の減少となっている。仮に、季節調整前ベースの数値で今後も毎月100万人の増加ペースを維持した場合、遅くとも11月分のNFPで新型コロナ禍前の雇用水準を回復する計算となる。
   以上を踏まえると、中期的な観点からは7月1日のPRESTIA Insight「米雇用統計プレビュー」で示された見通し通り、完全雇用へ向けた歩みを進めているとの見方に著変はないと筆者は考える。今後も米雇用統計の結果に対する注目度は高いだろうが、ひとまずは今回の結果を受けたFRB高官による見解や7月FOMCでの議論の行方に注目したい。
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