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日銀短観:本格的な景気浮揚にはなお時間

2021-07-05

■ 緊急事態宣言下でも、企業の景況感の改善基調が保たれていることが確認された
■ ワクチン接種進展に伴い経済再開が期待されるが、非製造業では先行き見通しになお慎重

    日銀短観(2021年6月調査)では、企業の景況感を示す業況判断DIは、大企業?製造業(14、前回比9ポイント上昇)、大企業?非製造業(1、同2ポイント上昇)ともに上昇した。いずれも4四半期連続で改善し、非製造業は5四半期ぶりにプラス圏に浮上した。非製造業の回復は鈍いものの、都市部を対象に発出された3度目の緊急事態宣言下でも、世界経済回復の恩恵を受けて改善基調が保たれていることが確認された。先行きは大企業?製造業が13(現況比1ポイント低下)、非製造業が3(同2ポイント上昇)で、新型コロナウイルスワクチンの一般接種が始まるなかでも非製造業は小幅上昇にとどまっている。
    業種別にみると、現況では、車載半導体の供給制約により生産調整を迫られた自動車(前回比7ポイント低下)が落ち込んだ。先行きでは、原材料価格高騰の影響で木材?木製品(現況比30ポイント低下)が大幅に悪化した一方、対個人サービス(現況比23ポイント上昇)、宿泊?飲食サービス(同27ポイント上昇)など、対面サービス業種の上昇が目立つ。
   その他の特筆点としては、大企業/製造業では、製商品需給判断DI(需要超過-供給超過)が国内(マイナス5、前回比8ポイント上昇)、海外(3、同9ポイント上昇)ともに大幅に上昇し、製商品在庫水準判断DI(過大-不足、6、同4ポイント低下)、製商品流通在庫水準判断(過大-不足、4、同4ポイント低下)は低下。仕入価格判断DI(上昇-下落、29、同14ポイント上昇)も大幅上昇している。加工業種を中心に需給逼迫、在庫不足、仕入価格上昇という課題に直面し、供給制約や原材料価格高騰の影響が強まっていることが確認できる。
   また、非製造業の業況判断DIは、現況から先行きにかけて、中堅企業(現況比変わらず)、中小企業(同3ポイント低下)では横ばい、もしくは低下している。日本でも、ワクチン接種進展とともに徐々に経済活動制限の緩和が進み、経済再開に伴って米国や欧州で見られるような景気回復ペースの加速が期待されているが、今回調査を見る限り、非製造業の間で先行きへの楽観が広がっているとは言い難く、本格的な景気浮揚には時間を要しそうである。
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