6月米雇用統計プレビュー
2021-07-02
■ 雇用者の増勢基調や失業率の低下は続き、完全雇用の達成に向けて歩みはそろう
■ ワクチン接種進展による集団免疫達成や、失業保険特例措置の終了で労働力不足は解消へ
米労働省が2日に発表する6月の雇用統計について整理しておく。本稿執筆時点では、非農業部雇用者数(NFP)は前月比70万人増と前月(同55.9万人増)から伸びが加速すると市場は予想している。コロナ禍前の2020年2月時点と比較すると、NFPは760万人減少したが、民間部門雇用者数は同60万人増、製造業雇用者数も同2.8万人増と増勢基調を維持するとみられており、完全雇用の達成に向けて歩みを進めていると判断される。
失業率は前月から0.1ポイント低下し5.7%へ改善、平均時給は前年比3.7%増と大幅な増加となる見通し。賃金が持続的に上昇すれば、物価高が一過性のものにとどまらない可能性もあるが、前月比ベースでは0.4%増と2カ月連続で伸びが鈍化する見込み。また、労働参加率は61.6%(5月分)と低いままだが、クオールズ米連邦準備理事会(FRB)副議長が先月末「ベビーブーマー世帯の退職で趨勢的に低下しているため、パンデミック前(2020年1月:63.4%)の水準まで戻る必要はないかもしれない」と述べた。雇用回復に歯止めを掛けるかどうか、FRBが今後、緩和縮小や利上げを判断するうえで足かせとなるか注目される。
米国の新型コロナウイルスワクチン接種率は53.8%(7月1日更新:Our World in Data)まで上昇したが、30歳以上に限れば7割に届いた模様。今後の接種進展によって全成人での集団免疫が達成されれば、今後数カ月で再び職に就く人が増えると見込まれる。副反応を不安に思い接種に消極的な人がいるほか、感染力の強いデルタ株によって復職する意欲を失う人が増えれば、労働力不足は解消されない。ただ、職場復帰を妨げていた週300ドルの失業給付加算措置は9月に期限を迎え、全米の約半数の州で期限前の7月までに打ち切りを発表。労働力不足への懸念は徐々に払しょくされることになろう。