原油相場が金融市場の波乱要因となる可能性
2021-06-25
■ 経済正常化に伴い原油需要は回復基調をたどるが、供給は伸び悩みの兆しがみられる
■ 原油価格高騰が米金融政策などの先行き不透明感を強め、市場の波乱要因となる可能性も
原油先物価格(WTI)は本稿執筆時点で1バレル=73ドル台と、2018年10月以来の高値圏で推移している。国際エネルギー機関(IEA)は世界の石油需要が新型コロナウイルス流行前である2019年の水準を超える時期について、3月の月報では「2023年」との予測を示していたが、今月11日に公表した6月の月報では「2022年末まで」に予測を前倒しした。世界経済の正常化に伴い、需要回復のペースが速まりつつある。
一方、供給サイドでは、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの主要産油国からなるOPECプラスは、2020年には一時日量970万バレルの大幅減産に踏み切っていたが、2021年5月、6月にそれぞれ同35万バレル、7月には同44.1万バレル減産幅を縮小することで合意している。また、米国はイラン核合意の再建に向けた間接的な協議を続けている。今月18日のイラン大統領選で反米?保守のライシ司法府代表が勝利しており、交渉は難航するとみられるが、仮に米国による経済制裁が解除されれば、同100万バレル超のイラン産原油が供給される可能性がある。しかしながら、新型コロナ禍以前には世界最大の産油国となっていた米国では、同1300万バレル程度をピークに2020年春には同1000万-1100万バレル程度まで産油量が減少し、その後も概ね同水準での推移が続いている。米国ではバイデン政権がクリーンエネルギー政策を推進しているうえ、主要国ではすでに脱炭素社会に向けた取り組みが加速。こうしたなか、米シェール企業による新規投資は抑制されており、イランからの原油輸出が再開されたとしても、供給過剰になることはないとみられている。
WTIはチャート上、2018年10月に付けた1バレル=76.90ドルを上抜けると、2014年7月頃まで付けていた1バレル=100ドル水準まで目立った節目が見当たらない。需給のさらなるタイト化が見込まれるなか、原油価格が高騰するリスクがくすぶっており、米国をはじめとする主要国の金融政策の先行き不透明感が強まることが懸念されよう。原油相場が金融市場の波乱要因となる可能性が無視できなくなりつつある。