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ブラジルレアル:着実な景気回復がレアルを支えよう

2021-06-24

■ ブラジル中銀は6月の金融政策委員会で、3会合連続の利上げ(各0.75%)を決定

■ 着実な景気回復を伴う利上げ継続の思惑から、レアルは新興国通貨の中でも堅調な展開に

    本稿では、6月16日に開催されたブラジル中央銀行(以下、BOB)による金融政策委員会(COPOM)と、直近のブラジルレアル(レアル)の動向を確認する。BOBは6月のCOPOMで0.75%の利上げを決定し、政策金利を4.25%とした。3月COPOMで、トルコを除く主要新興国の中で最初に利上げを再開しており、0.75%の利上げは3会合連続となっている。そうしたなか、6月16日には米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備理事会(FRB)が利上げ実施時期の見通しの前倒しを発表。新興国市場では米ドル高?新興国通貨安が進んだなかでも、レアルは比較的底堅く推移している。本稿執筆時点では、対米ドルが5.01レアル台(水準が低いほどレアル高?米ドル安)、対円は21.9円台(水準が高いほどレアル高?円安)と、昨年6月以来のレアル高水準まで戻している。
    レアル高の背景は、BOBによる利上げ継続姿勢が挙げられる。6月COPOM後に公表した声明で、「現時点の基本シナリオでは、中立的な水準への政策金利正常化が適切」とした。市場ではBOBの想定する実質ベースの中立金利を、3%前後と推計している。それに2022年の物価目標(3.5%)を加えると、政策金利は6.5%まで上昇する可能性がある。また、6月9日公表の5月の消費者物価指数(IPCA)は、前年比8.06%上昇とBOBの物価目標レンジの上限(5.25%)を突破しており、市場の利上げ継続観測は根強い。BOBの利上げ継続に伴いレアルが高金利通貨になるとの思惑が、足元のレアル高に寄与している。
    また、今のブラジルを取り巻く市場環境では、景気回復期待を伴う利上げ実施を想起させることも、レアル高見通しにつながると言えよう。ブラジルの国内総生産(GDP)は2021年1-3月期時点で、新型コロナウイルス禍前(2019年10-12月期)の水準を回復。加えて、国内の新型コロナワクチンの接種では、有効性が高いとされる欧米製ワクチンへの切り替えが進み、経済活動正常化に対する期待は高い。また、6月1日に公表された5月の貿易収支では、4月の過去最高(103億ドル)に続く過去2番目の黒字幅(93億ドル)を記録している。当面の間、FOMCの結果を受けた新興国通貨に対する逆風で、レアルも不安定となる可能性がある。ただ、ファンダメンタルズの堅調さが浸透するにつれ、対米ドルと対円はともに昨年6月高値(4.8165レアル、22.504円)へ向けて底堅い推移が見込まれよう。
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