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FOMC:政策姿勢を明確にシフト

2021-06-21

■ 参加者の政策金利見通しが引き上げられ、2023年までに利上げが開始される可能性が高まる

■ 物価判断の上方修正を背景に、政策正常化に向けて姿勢を明確にシフトした


    6月15、16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利目標、資産購入目標額は据え置かれた。声明文でも、新型コロナワクチン接種の進展が明記された点以外は大きな変更はみられなかった。ただ同時に発表された「経済見通しの概要(Summary of Economic Projection、SEP)」では、2023年までの個人消費支出(PCE)デフレーターの見通しが3月時点から上方修正され、今後3年間、常態的に目標の2%を上回る見通しが示された。また政策金利見通しでは、2023年の中央値が0.125%から0.625%へ50bp引き上げられ、2023年までに利上げが開始される可能性が高まった。
   今回の最大の焦点であった資産購入の段階的縮小(テーパリング)に関して、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、FOMC後の会見にて、協議を始めることを認めつつも、実施時期は「今後の経済データを確認して判断する」と、スケジュールなどに関する具体的な手掛かりは特に示さなかった。ただ、「労働市場の需給関係は今後数カ月で均衡する見通し」だと述べるなど、開始時期を視野に入れつつあることも示唆した。
    総合的には、テーパリングなど政策正常化を時期尚早としてきた従来からの明確な政策姿勢の転換と評価できる。利上げ開始までの時間軸が2023年ごろに短縮化されたことに加えて、明言されなかったテーパリングの開始時期も、利上げ開始前の2022年などが強く意識されるようになった。政策姿勢転換の背景には、物価判断の上方修正が指摘できる。インフレ加速は一時的との従来の見解は堅持しているが、インフレ圧力がFRBの見通しよりも強いことを認め、インフレ経路や長期的なインフレ見通しが持続的に目標水準を上回る兆候があれば、政策調整を行う準備があると言及した。今後は、物価、雇用を中心に「データ次第」で政策調整までの時間軸の伸縮を伴うことが想定され、一段と注目度が高まることになろう。
    テーパリング協議に着手したFRBにとって、次の課題は、経済や金融市場に大きな混乱を引き起こすことなく実施スケジュールを織り込ませることである。政策正常化における最難関のプロセスであり、丁寧なコミュニケーションが要求されるため、タイミングとしては、カンザスシティ連銀主催の8月26-28日のジャクソンホール経済政策シンポジウムや、次回のSEPが公表される9月21、22日のFOMCなどが有力候補となる。
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