今後はワクチン2回接種のデータが重要視されよう
2021-06-18
■ 調査結果によれば、新型コロナのデルタ株に対するワクチンの有効性は2回接種により高まる
■ 米英でもワクチンの2回接種率は45%弱であり、経済正常化がとん挫するリスクはくすぶる
英政府は14日、イングランドで21日に予定していた新型コロナウイルス感染拡大抑制のためのロックダウン(都市封鎖)解除の最終段階*1実施を4週間延期すると発表。インドで最初に確認された変異型ウイルス(デルタ株)の流行により、5月下旬以降、新規感染者数が増加傾向にあることが背景にある。
英イングランド公衆衛生局(PHE)が先月公表した調査結果によれば、英製薬大手製ワクチンのデルタ株に対する発症予防率は60%と、米製薬大手製ワクチンの88%を大きく下回るが、この数値は2回接種後のものであり、1回接種ではいずれも33%にとどまる。一方、PHEが14日に公表したデータによれば、2回接種後の入院回避効果は米製薬大手製が96%、英製薬大手製でも92%に達している。新型コロナの感染拡大や感染者増加による医療ひっ迫を抑制するためには、ワクチンの種類よりも接種回数が重要となろう。市場参加者の間でも国や地域別のワクチン接種率への関心は高いが、今後は2回接種のデータが重要視されよう。
英オックスフォード大が運営するOur World in Dataによれば(米は13日、日英は14日時点)、主要国のなかでワクチン接種が先行している米英でも2回接種率は45%弱であり、集団免疫獲得の目安として多くの国が目標としている70%にはまだ距離がある。よって、株式市場などでみられる経済正常化進展を見込んだ取引は、一時的とはいえ、シナリオ変更に迫られる可能性が相応にくすぶっているようにみえる。特に、日本については、先月中旬以降にワクチン接種が加速しているとはいえ、2回接種率は5%程度にとどまる。加えて、Google社が公表しているMobility Reportによると、すでに先月下旬から人の流れが増加傾向にある。こうしたなか、20日には緊急事態宣言の期限を迎えるが、予定通りに宣言解除となれば、一段と人の流れが活発化しよう。その先には7月23日の東京五輪開幕が控え、感染再拡大、いわゆる「第5波」が到来するリスクは無視できない。足元では日本株も上値が軽くなりつつあるが、本格的に欧米株とのギャップ*2を縮小する局面は今秋以降にずれ込む可能性があるだろう。
*1 イングランドでは3月8日の学校再開を皮切りに4段階で規制緩和を実施
*2 米国(S&P500)、欧州(ストックス600)、日本(TOPIX)の年初来騰落率は、それぞれプラス13.06%、プラス14.98%、プラス9.46%(6月15日終値)