米国のみならず中国の物価関連指標にも要注目
2021-06-16
■ 5月の米CPIは市場予想以上の高い伸びとなったが、一過性の要因が強い状況は変わらず
■ 中国で産業向け素原材料の価格が高騰しており、同国発のインフレへの警戒が強まる可能性も
10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)は前年比5.0%上昇、食品とエネルギーを除いたコアCPIは同3.8%上昇と、前者は2008年8月(同5.4%上昇)以来、後者は1992年6月(同3.8%上昇)以来の高い伸びとなった。また、いずれも市場予想(同4.7%上昇、同3.4%上昇)を上回っており、米国では想定以上に物価上昇圧力がかかる状況が続いている。
しかし、レンタカー代(同109.8%上昇)、自動車燃料(同55.5%上昇)、中古車?トラック(同29.7%上昇)、航空運賃(同24.1%上昇)など、ベース効果(前年に低下した影響で前年比が高く出ること)に加え、経済活動再開に伴う需要拡大や半導体などの供給制約が一部の品目を強く押し上げている状況は4月から変わっていない。また、前月比でみればCPIが0.8%から0.6%、コアCPIは0.9%から0.7%と、いずれも4月から伸びが鈍化している。これらを踏まえると、米インフレ懸念が払しょくされるには程遠いが、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策スタンスに影響を及ぼす結果ではなかったといえよう。
一方、前日(9日)に発表されていた中国の物価関連指標をみると、5月のCPIは前年比1.3%上昇と4カ月連続で伸びが加速したが、食品とエネルギーを除くコアCPIは同0.9%にとどまるうえ、いずれも政府が今年の物価目標とする「3%前後」とは依然としてかい離が大きい。しかし、5月の生産者物価指数(PPI)は同9.0%上昇と7カ月連続で伸びが加速し、2008年9月(同9.1%上昇)以来の高水準となった。内訳をみると、食料品、衣料品などの消費財が同0.5%上昇にとどまる一方、採掘(鉱物資源)が同36.4%上昇、原料品が同18.8%上昇と、ベース効果があるとはいえ、産業向けの素原材料価格が高騰している。よって、現時点で国内のインフレ高進を懸念するには至らないが、同国から中間財(製品の原材料や部品等)や資本財(生産を目的として使用する製品)を輸入している国へインフレ圧力が波及することが懸念されよう。米金融政策の先行きを見極めようと米物価関連指標への注目が高まっているが、株式市場などでは中国発のインフレ圧力への警戒が強まる可能性も意識しておきたい。