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供給制約が続くなかで米雇用統計の発表を迎える

2021-06-04

■ 米製造業のマインドは引き続き良好だが、現時点で供給制約に解消の兆しはみられず

■ 5月の米雇用統計は堅調でも低調でも思惑が交錯し、株式市場の解釈は分かれよう


    1日に発表された5月の米ISM製造業景況感指数は、4月の60.7から61.2に上昇し、市場予想(60.9)も上回った。約37年ぶりの高水準となった3月の64.7には及ばなかったものの、中立水準である50を大きく上回る状況が続いている。また、業種別では、全18業種のうち16業種が「拡大」と報告しており、製造業のマインドは良好といえよう。
    全体指数を構成する項目(新規受注、生産、雇用、入荷遅延、在庫)をみると、「新規受注」は3月に68.0と2004年1月(70.6)以来の水準に上昇した後、4月は64.3までやや押し戻されたものの、再び67.0まで上昇。これまでの大規模な財政出動やそれに伴う景気回復を背景とした需要の堅調さが示唆されていよう。しかし、「生産」は3月の68.1、4月の62.5に続いて58.5、「雇用」は3月の59.6、4月の55.1に続いて50.9となり、いずれも2カ月連続で大幅に低下したうえ、「入荷遅延」は78.8と1974年4月(82.1)以来の水準にまで上昇している。企業では、新型コロナウイルス感染への警戒、育児や介護、失業保険の特例給付受給、などを理由に労働市場への復帰を見送る人が多いほか、熟練労働者の確保も難しく、人手が不足。そのうえ、半導体や木材をはじめとする原材料の調達にも苦心しており、生産活動の足かせになり始めていることがうかがえる。現時点では、こうした供給制約に解消の兆しがみられていない。
    こうした点を踏まえて、4日に発表される5月の米雇用統計を受けた株式市場の反応を考えてみたい。仮に、市場の予想ほど労働市場の回復がみられなかった場合、米連邦準備理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の段階的縮小)についての議論開始を前倒しにするとの警戒は後退しよう。しかし、人手不足が長引けば、企業は旺盛な需要に対応することが難しく、業績改善ペースの鈍化といった懸念が浮上する。逆に、市場予想よりも強い結果となれば、企業業績見通しに対してはポジティブな材料となるが、テーパリング観測が強まるだろう。上述した通り、供給制約は労働力に限った問題ではなく、実際にはさらに解釈は複雑化しようが、いずれにせよ思惑が交錯し、株価の方向感を決定づける材料にはならないだろう。
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