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世界経済:ワクチン接種進展により経済活動は正常化へ

2021-06-03

■ OECDは世界経済の成長率見通しを上方修正。ただし、ワクチン接種の遅れる日本は下方修正

■ 2022年までは政策支援により大きく下振れる可能性は低いが、政策正常化が波乱要因に


   経済協力開発機構(OECD)は5月31日に最新の「経済見通し(Economic Outlook)」を公表した。世界経済の実質GDP成長率は、2021年に5.8%、2022年に4.4%と前回公表の3月時点より上方修正された。世界経済は、来年にかけて巡航速度を上回るペースで持ち直し、多くの国が2022年末までにコロナ禍以前の水準を回復すると見通されている。新型コロナウイルスワクチンの早期普及や、前例のない規模の財政/金融政策により、短期間で危機脱却に成功するシナリオは、4月の国際通貨基金(IMF)の見通し*1と概ね共通する。ただ、ワクチン接種の進展度合いなどにより、地域間で回復ペースの格差が広がっている。接種率が高い米国(2021年:6.9%、2022年:3.6%)は2021年、ユーロ圏(2021年:4.3%、2022年:4.4%)は2021、2022年の成長率見通しが引き上げられ、特にユーロ圏は、米国に遅れて景気回復が本格化し、2022年は米国を上回る成長が見込まれている。一方、ワクチン接種が遅れる日本(2021年:2.6%、2022年:2.0%)では、2021年の成長率が引き下げられた。2022年の回復ペース加速も見込まれておらず、欧米との景気格差は3月時点より広がっている。
   また、当面の焦点となる物価動向については、インフレ加速を一時的な現象とする米連邦準備理事会(FRB)と同様の見解を示した。生産能力の正常化(すなわち供給制約の解消)、財からサービスへの消費シフトなどにより、物価上昇圧力は2021年末より徐々に弱まり、世界の物価上昇率は、2021年に2.7%まで加速後、2022年は2.4%へ鈍化すると見通している。
   今回の予測対象期間である2022年までは、米国の大型経済対策の中心に政策支援が見込まれるため、見通しを大きく下回る可能性は、平時よりも相対的に低いと考えられる。ただ、景気回復が明らかになるにつれ、必然的に財政/金融政策も正常化に向かう可能性が高まる。政策正常化が波乱なく進むことが見通しの前提となっているが、下振れリスクとして、その過程で金融市場の混乱が生じる場合、経済に悪影響が及び得ることも記されている。ひとたび均衡が崩れれば、経済、金融市場の変動が相互に増幅されやすくなっていることを意味しており、従来以上に金融/財政当局の政策手腕に強く依存する状況を示している。

*1 IMF “World Economic Outlook: Managing Divergent Recoveries” (April 2021)
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