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米CPIとPCEデフレーターの違いについて

2021-05-26

■ 米CPIとPCEデフレーターはいずれも物価動向を示す指標だが、調査対象などに違いがある

■ 注目度は高いもののサプライズは想定しづらく、再び市場が動揺する可能性は低いだろう

    5月12日に米国で発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前年比4.2%上昇、食品とエネルギーを除いたコアCPIは同3.0%上昇となり、いずれも市場予想(同3.6%上昇、同2.3%上昇)を大幅に上振れた。これを受けてNYダウが一時、約1カ月ぶりの安値を付けるなど金融市場に動揺がみられたことは記憶に新しいが、同じく物価関連指標である個人消費支出(PCE)デフレーターの4月分が28日に発表される。
    CPIとPCEデフレーターの違いとして、まずはデータソースの違いが挙げられ、前者は家計調査で報告される消費者購買データ、後者は企業調査の小売販売データから算出されている。それゆえ、調査対象の広さにも違いがあり、前者は都市部に限定されているのに対し、後者は全国を対象としている。また、医療費に代表されるような企業や政府などが対価を支払うことによって消費者が享受するサービスについて、前者は自己負担分のみ、後者は全額が集計される。さらには、前者は一定期間、対象になる品目が固定されており、その間に発売された新商品や価格変化などによって生じた代替消費が反映されないが、後者はそのような消費行動の変化を織り込むように調整がなされている。こうした違いから、より包括的であるのは後者と考えられ、米連邦準備理事会(FRB)も金融政策を決定するうえでは後者を重視している。
    4月のコアPCEデフレーター(食品とエネルギーを除く)は前年比2.9%上昇と、3月の同1.8%上昇から大きく伸びが加速すると市場では予想されている。ただ、2000年1月から2021年3月までの255カ月のうち、コアCPIを上回る伸びとなったのは31カ月しかないうえ、その上振れ幅の平均は0.3%弱にとどまることを踏まえると、市場予想を大幅に上回る可能性は低いといえよう。よって、物価動向に対する注目度は高まっているが、今回のデータが米金融政策の先行きに対する見方を大きく変えるとは想定しづらく、市場の反応は限定される公算が大きい。
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