News

台湾情勢を注視すべき

2021-05-25

■ 半導体生産の新たなボトルネックとなるおそれ

■ 米中対立が再び深まる可能性も

   台湾で新型コロナウイルスの感染が急拡大し、警戒感が強まっている。14日までの過去1年間で630人だった域内感染者が17日の1日だけで335人に急増し、20日まで200人台で高止まりしている。台湾衛生当局は19日、台湾全域を対象に感染警戒レベルを28日までレベル3に引き上げることを決定した。屋外でマスクの常時着用が義務化され、屋内では5 人以上、屋外では10人以上で集まることが禁止され、学校も閉鎖される。6月30日までに予定されていた台湾上場企業の株主総裁の開催は7月以降に延期されることが発表されており、重要プロジェクトの決定などに影響が及ぶ可能性がある。
   台湾中央流行疫情指揮センター(CECC)のガイドラインによると、1日あたり100人の新規感染者数が14日連続で報告され、また感染減の半分超が不明である場合、必要不可欠な場合を除いて外出を禁止するレベル4に引き上げられる。レベル4の制限の詳細は不透明であるが、不可欠なビジネスと判断され工場の閉鎖は免れたとしても、人の移動および物流が制限されれば、半導体の生産に影響が及ぶ可能性がある。国/地域別半導体生産能力において台湾の世界シェアは22%に上り(IC Insight、2019年12月時点)、供給制約がさらに強まる可能性があることから警戒したい。
   また、新型コロナの感染急拡大を受けて、高い支持率を確保していた蔡英文総統の支持率が41%に急落し、初めて不支持が支持を上回った。蔡総統は台湾経済の中国依存を脱却しようと、米国産豚肉の輸入を大幅に解禁するなど、米国と連携を進めてきた。台湾海峡問題を巡り先進国を中心に国際的な支援体制が整いつつあるなか、蔡総統の支持率低下が米中対立を再び深める引き金となりかねない。台湾の新型コロナ再拡大をきっかけに、経済的?政治的な悪影響が世界に広がらないか注目したい。
TOP