豪労働市場は改善傾向が強まる
2021-05-24
■ 5月の失業率は5.5%と約1年ぶりの低水準、不完全雇用率や若年層失業率の低下も顕著
■ RBAの緩和調整を織り込み金利先高観は根強いが、目先は豪ドル高の調整に注視へ
豪統計局が20日に発表した4月の雇用統計は、就業者数が前月比3万600人減と市場予想に反して減少した。内訳をみると、非正規雇用者は同6万4400人減に対し、正規雇用者は同3万3800人増となっており、4月のイースター休暇やスクールホリデーによる休暇取得など季節的要因が反映したとみられる。政府による賃金補助制度が3月28日で終了したことも影響した可能性はあるが、幅広い年齢層で大規模な雇用が失われているなどの明らかな変化は確認されなかった。失業率は5.5%と前月から0.2ポイント低下し6カ月連続で改善、労働需給の引き締まりを示すとされる不完全雇用率(労働日数?時間が短く完全雇用に達していない雇用水準)は7.8%と、それぞれ2020年4月、2014年5月以来の低水準を付けた。また、若年層の失業率は世界金融危機以来で最低となるなど、雇用情勢は改善傾向を強めている。
失業率は豪中銀(RBA)が「最大雇用」とする4.5%前後の水準には届いていないが、コロナ禍前の水準(2019年12月:5.2%)に着実に近づいている。こうしたなか、1?3月期の賃金指数は前年比1.5%上昇と過去最低を記録した前期(同1.4%上昇)をわずかに上回る程度にとどまる。今のところ、物価上昇圧力は抑えられているが、賃金インフレが高まるとの期待もくすぶる。RBAは、「利上げは早くても2024年まで予想していない」との緩和姿勢を堅持。今週公表された理事会議事要旨(5月4日分)でも、「インフレが生じるためには賃金の伸びが持続的に3%を超えることが必要」との認識を示した。ただ、金利先物市場では2022年に0.15%の利上げが60%の確率で織り込まれており、金利先高観は根強い。
為替市場では米ドル安の展開も相まって、豪ドルは底堅さを維持しているが、騰勢を強めた鉄鉱石価格は下げに転じている。中国政府が19日、コモディティ市場の安定化に向けて需給両面で管理を強化する方針を打ち出したことが一因とみられる。こうしたなか、今朝発表された4月の豪小売売上高(速報値)は前月比1.1%増と市場予想を大幅に上回る伸びとなったが、アジア市場での豪ドル買いは限定的。豪中関係が再び悪化していることにも目配りし、目先は豪ドル高の調整に注意を払いたいが、豪ドル米ドルは0.75‐0.77米ドル、豪ドル円は82‐83円を下値メドに底堅さが試される展開を想定している。