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期待と現実の差が埋まる格好で投資家信頼感が改善

2021-05-18

■ 5月に入っても景気回復に対する現状認識が世界的に改善し、投資家の信頼感は一段と上昇

■ インフレ指標に対する株式市場の過度な反応は徐々に和らぎ、株高基調へ回帰しよう


   ドイツの調査会社Sentixが5月6日から8日にアナリストや機関投資家を対象としたサーベイを実施し、10日に公表した5月の投資家信頼感指数では、グローバル総合指数が28.3と2020年4月のマイナス32.2から13カ月連続で改善し、2018年2月(30.0)以来の高水準となった。

   先行き指数と現状指数の差(先行き-現状)に注目すると、2020年6月には72.2まで拡大し、金融危機直後の2009年5月につけた52.2を大幅に上回った。新型コロナウイルス感染拡大やそれに伴う経済活動への制約が強まるなかで現状認識が悪化した一方、主要国で大規模な財政?金融政策が発動したことで先行きへの期待が高まったとみられる。その後、11月には29.0まで縮小し、2021年1月にかけて39.8まで再拡大したものの、4月には21.5、そして5月には10.6まで縮小している。昨秋から今年の年始にかけては、バイデン米大統領や米民主党政権による積極的な財政拡張、新型コロナワクチン普及などへの期待を背景に一時的に先行き指数が総合指数改善をけん引した。しかし、それ以降は現状指数の上昇、つまり、期待に現実が追いつくかたちで信頼感が回復している。4月から5月にかけては、先行き指数が37.7から33.7に低下したことはやや気掛かりではあるが、現状指数は16.3から23.0へ大幅に上昇。足元の世界景気の回復に対して、投資家は着実に自信を深めているといえよう。

   先週は4月の米消費者物価指数が市場予想を大幅に上回り、米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和の早期縮小に迫られるとの懸念から世界的に株式市場が調整色を強めた。こうしたなか、米アトランタ連銀のボスティック総裁は12日、インフレ指標について「経済活動の再開に伴い少なくとも9月いっぱいまで、ボラティリティ(変動性)の増大が見込まれる」としたうえで、「政策当局は基調トレンドを入念に見極める必要がある」との認識を示している。足元のインフレ急加速を安易に「一過性」とみるわけにはいかないが、「持続的」と判断するのも時期尚早であろう。よって、株式市場では一定の警戒感がくすぶりつつも、インフレ指標に対する過剰な反応は次第に和らぎ、景気や企業業績の回復に伴う株高トレンドへの回帰が見込まれよう。

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