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2021年5月第4週(17~21日)の相場展望

2021-05-17

12日水曜日に発表された米国の消費者物価は予想外の上昇で、市場には大きなインパクトとなり、米国長短金利を上昇させ、また株価の下落を招いた。インフレ圧力が大きく強まったことで、FRBが金融緩和政策を転換するのではという思惑が背景だ。前月比で3月に0.6%、4月0.8%で、前年度4.2%で2008年9月以来の大きな伸びであった。このサプライスに近い数値は市場関係者には驚きの数値であったであろう。過熱気味の株式相場の上昇が続いていたため、これを理由として、売りを待っていた投資家からの利食いが冷や水を浴びせた結果となったのが実情か。米国金利の上昇でドルが買われ、ドル円は先月の高値を上抜けし、対ドル通貨は反転下落となっている。インフレの中身であるが、原油の伸びも大きいが、食料とエネルギーを除いたすべての品目指数が0.9%上昇と物価が軒並み上がっている。米国はワクチン接種が進み、航空機予約が徐々に増加しており、消費財の購入や外食関連、レクレーションなど脱コロナの動きが物価を後押ししているのが背景であろう。消費者物価指数の発表後にFRB委員の面々からは、一時的なインフレには変わりないとするコメントが出されており、未だ楽観視しているようだ。消費者物価指数の発表翌日に生産者物価指数の発表があり、これも予想を大きく上回ったが相場は逆に反転する流れとなった。今後物価関連の指標には注目が集まりそうで、相場への影響は残るだろう。

外国為替はドル高とはなっているが大きなドル高までは至っておらず、どちらかというと円安傾向が見て取れる。日本国内での新型コロナ感染者の増加で、緊急事態宣言やまん延防止重点措置に指定された地域が増え、また感染者の中でも感染が早いとされる変異種の割合が急激に増えていることも日本経済の先行き不安を増幅しているようだ。また日本政府のいつものことながら遅い対策決定や世界からのワクチン接種遅れに国民はヤキモキしている。これでは日本売りになるのも納得だ。それに加えて、世界でワクチン接種数が順調に進んでいることを背景に経済の回復が見込まれており、国際商品価格の高止まりを演出している。日本は、高止まりした価格の資源と膨大なワクチンを輸入しているため、貿易黒字は伸びにくいこともあり、円安材料の一つとなっているようだ。今後は5月末まで伸びた緊急事態宣言が再度延長となると、オリンピックへの影響が避けられず日本売りが加速する可能性も出てきそう。この2週間程度の感染者の推移次第であろうか。ドル円は110.96が3月の高値であり、そのから下落幅の61.8%である109.64は先日クリアーしている。現在のところ110円には売りが多いなか110円半ば以降に損失覚悟の買い指値が増えている模様。110円半ばをクリアーしていくと111円台が早い可能性もある。

ドル円日足チャート


世界ではイスラエルのパレスチナへの侵攻も影響は今のところ大きくはないが、今後の波乱要因の一つであり、原油価格への影響を鑑みると、米国のインフレに加算する可能性が大きいため注意は必要か。

通貨の中で注目したいのが、堅調推移を続けている英国ポンドである。2018年に付けた高値1.4375にじりじりと迫っており視界に入ってきたと考える。ファンダメンタルズからの理由として、英国政府の素早いワクチン接種への対応と日本とは比べ物にならなく、国民には負担であったロックダウン(都市封鎖)の積極的な取り組みによるものが大きく、今回のパンデミックには功を奏した形となった。今週からはロックダウン解除4段階においての3段階に進むことになり、屋内集会、店内飲食、映画館や屋内スポーツ施設の営業再開、また学校での授業再開も予定されており、今後の経済活動へ好影響を及ぼすのは間違いなさそう。変異種などのリスクもあるが、それもワクチン接種率上昇が抑えていけそうで、段階を追って解除する細かな設定がなされていることが国民へ安心感をもたらしているようだ。英国の1-3月GDPは前期比ではややマイナスだったが、きつめのロックダウン下を考えると良かった数値だと考える。いち早く脱コロナの動きが明白な英国はポンドの上昇も後押ししそうで、近日中の約3年ぶりの高値奪回の可能性が大きくなりそう。高値更新にはまず2月高値の1.4240を奪回する必要があり、この抵抗を抜けると前述の高値まで抵抗は少ないと見ている。逆に1.4000を割れてしまうと調整期間が長引くこともあるだろう。要は一目均衡表の転換線である赤線より上を維持している間は、短期的に見ても堅調持続する可能性が大きいということ。

ポンドドル日足チャート


先週金曜日に発表された小売りやミシガン大学消費者態度指数の軟調結果は、インフレからの影響が大きいとされるが、市場は金利下落、株価上昇で推移し、ポジション調整で終始していたようだ。引き続きインフレ要因となる材料には反応しやすい相場付きは続きそうだ。今週の注目は水曜日のFOMCの議事録であろう。また欧州や英国では消費者物価指数が発表されることで、その国々の金利上昇から相場波乱へと動く可能性も想定する必要があるだろう。また米国の新規失業保険申請件数が好転となると、これもまた金利上昇への布石となるから注意が必要。金曜日の欧米PMIも直近の景況感を掴む指標となる。
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