ポンドの騰勢
2021-05-14
■ 1‐3月期の英実質GDPは前期比で3四半期ぶりのマイナス成長だが、回復の兆候も表れる
■ 新型コロナウイルスの感染阻止とワクチン接種拡大で景気回復期待は大きく、ポンド高は継続か
1‐3月期の英実質GDP(速報値)は前期比1.5%減と3四半期ぶりのマイナス成長となった。個人消費の低迷が続いたことに加え、設備投資も大幅に減少した。前年末の欧州連合(EU)離脱移行措置終了前に前倒しされた投資需要の反動が表れたほか、4月施行の新たな税優遇措置を控えて投資が手控えられた。新型コロナウイルスの変異種感染拡大を受けた都市封鎖が経済活動を制限し、成長を下押ししたことも背景にある。こうしたなか、英政府は2月下旬に段階的な緩和措置のロードマップを発表、3月8日から6月21日までの移行期間を全4段階に分けて展開している。5月17日にはステップ3が始まり、飲食店やパブなどの屋内営業や大規模イベントの開催の許可が下りるほか、屋内での面会が最大6人または他1世帯まで認められる。3月の実質GDPは前月比2.1%増と昨年8月以来の高い伸びを記録。業種別では、GDPの約80%を占めるサービス部門が成長をけん引し、景気回復の兆候が表れつつある。
ジョンソン英首相は12日、新型コロナウイルスによる世界的大流行(パンデミック)への政府対応を巡る調査を2022年春に実施する方針を表明。「政府の行動を詳細に調査し、今後に向けた教訓を得る義務がある」と述べ、感染再拡大リスクに備える。1年前のパンデミック初期の際、国境閉鎖が遅延したとの批判もあるが、コロナワクチンの接種プログラムが進展し、国民の政府への評価は改善。英国では高齢者を対象に新型コロナワクチンの接種が昨年12月に始まり、接種率は52.4%と米国(45.9%)やドイツ(33.1%)を先行、日本はわずか2.9%と遅行しているのは明らかである(Our World in Data、5月12日時点)。4月の総合PMIでも、米国は63.5、英国は60.7と上昇基調が鮮明であるのに対し、ドイツは55.8へ低下、日本は51.0と景況感の分かれ目となる50.0を15カ月ぶりに超えたが、主要国のなかでの低調ぶりが目立つ。為替市場ではポンドが騰勢を強め、ポンドドルが1.41ドル台後半へ上昇し2月に付けた年初来高値1.4235ドルを視野に入れる展開。ポンド円は昨日、154円台前半へ上伸し2018年2月以来の高値を付けた。市場予想では、4‐6月期の英実質GDPは前期比4.0%増へ加速、7‐9月期以降は成長ペースが鈍化する見通しだが、プラス基調は続くと見込む。来週21日には5月PMIが発表されるが、ポンドの底入れ感は強く、ポンドドルは2018年4月高値1.4376ドル、ポンド円は同年2月高値156円61銭を上抜ければ160円の大台が意識されよう。