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カナダドル:ポイントは「金融政策」「原油」「米国」

2021-05-13

■ 騰勢を強めるカナダドルは、対ドルで2017年9月以来、対円で2018年1月以来の高値圏へ上昇

■ 新型コロナワクチンが順調に普及すれば、当面カナダドルは底堅い展開が見込まれよう


   本稿では、騰勢を強めるカナダドル(以下、加ドル)の動向について確認する。米ドル加ドルは昨年3月につけた高値1.4667加ドルをピークに、下落基調(=加ドル高)が続く。5月10日には、一時2017年9月以来となる1.2074加ドルまで米ドル安?加ドル高が進展。また、加ドル円も、同じ日に2018年1月以来となる90円台乗せを達成している。
   改めて加ドル高進展の背景を整理すると、主に3点あると筆者は考える。すなわち、(1)カナダ中銀(BOC)が4月の政策会合で2022年下期の利上げ開始を示唆、(2)堅調な原油価格(WTI先物)、(3)隣国である米国景気の回復、である。(1)は、BOCが4月政策会合後の声明で、「経済のスラック(需給の緩み)が吸収されるまでは低金利を維持する」としつつ、スラックの吸収完了時期の見通しを2022年下期へ前倒したことが背景にある。併せて、毎週の国債純買い入れ目標額を、従来の40億加ドルから30億加ドルへ減額し、主要先進国で最初にテーパリング(債券購入の縮小)を開始。金融緩和縮小への思惑が、直近の加ドル高を後押ししている。なお、5月10日時点でカナダ国内の新型コロナウイルスワクチン接種率*1は、39.72%まで進捗した。経済正常化期待の高まりも、金融緩和縮小への思惑につながっている。
  (2)は、カナダが原油大国であることが背景。カナダの原油生産量は世界第4位、原油埋蔵量は世界第3位(ともに2019年*2)。手元の計算で、米ドル加ドル(為替レート下落が加ドル高を示す)と原油価格の相関係数は直近10年間でマイナス0.90と、上昇と下落いずれの値動きにせよ、加ドルと原油価格は連動する傾向がみられた。過去一年間で原油価格は100%近く上昇したが、堅調な原油価格は加ドル高を支える要因と言えよう。なお、カナダは他の資源生産量も大きく、鉄鉱石は世界第8位(2018年*3)、銅は世界第9位(2015年*3)、天然ガスは世界第6位(2019年*2)。加ドルは豪ドルと並ぶ代表的な資源国通貨との位置付けだ。(3)では、米国への輸出比率の高さが挙げられる。全輸出のうち米国だけで74.6%を占め(2019年)、カナダは経済の結びつきが強い米国の景気回復から、大きな恩恵を受けられる。
    北米での新型コロナワクチン普及が順調と想定した場合、(1)-(3)の要因は残り続け、加ドルは底堅い展開が続く見込み。米ドル加ドルは節目1.20加ドルを下抜ければ次は2015年5月安値(1.1916加ドル)が、加ドル円は2017年9月高値(91円63銭)が意識されよう。
出所 *1:「Our World in Data」、*2:「BP」、*3:「United States Geological Survey」

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