米労働市場の回復継続との見方は変わらず
2021-05-11
■ 4月の米雇用統計は、米労働市場の回復加速が見込まれていたが、期待外れの結果に
■ 米景気の先行きに対する見通しは変わらないが、FRBの政策判断には影響を与える可能性も
7日に発表された4月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比26.6万人増、失業率は6.1%となった。市場では、前者が3月の同77.0万人増(速報は同91.6万人増)に続いて同97.8万人増と2カ月連続で大幅な伸び、失業率は3月の6.0%から5.8%に改善と、米労働市場の回復加速が見込まれていただけに、期待外れの結果といえよう。
NFPの市場予想対比での大幅な下振れについては、(1)失業保険の特例給付(週300ドル)により失業者が仕事に復帰するインセンティブが低下している、(2)学校での対面授業が再開途上にあるなか、育児のために職場復帰が難しい親がいる、などが指摘されている。特に(1)については見方が分かれるところで、米商工会議所が「人々を働かないようにする給付が、本来強いはずの労働市場を弱くしている」との声明を発表した一方、イエレン米財務長官は「労働力に復帰する準備や能力のない人々がいることは明らかで、失業保険手当の拡充が実質的な変化をもたらしているとは考えにくい」と述べている。この点について、一時的離職を除いた失業者数に注目すると、昨夏以降、400万人台で高止まりが続いている(4月は427.3万人)。よって、確かに、失業者に対する手厚い保障が雇用回復を阻害している傾向はあろうが、4月単月においてNFPの伸びが大幅に前月を下回った理由としては説得力に欠けよう。
米雇用統計、特にNFPについては月毎で振れが大きく、単月の結果だけで基調が変化したと判断すべきではないとの見方が一般的であり、現時点では今回も単月の振れとしてみておくのが妥当であろう。また、失業保険の特例給付は9月6日に終了する予定であるうえ、新型コロナウイルスのワクチン接種進展に伴い学校再開の動きが加速することも見込まれよう。よって、米労働市場、ひいては米景気の先行きに対する見通しを変える必要はなく、引き続き回復基調をたどるとみている。ただ、仮に5月分も低調な結果となれば、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の段階的縮小(テーパリング)開始を示唆するタイミングがさらに後ずれするとの思惑から、株式市場では金融緩和の早期縮小への警戒が後退する可能性があるだろう。