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米雇用回復期待は広がるが、最大雇用に達せず

2021-05-10

■ 失業率は低下傾向をたどっているが、FRBが目指す広範囲で包摂的な雇用には達していない

■ ドル円は107円台半ばで底堅さを試す展開が続き、109円台後半を上抜ければ上昇基調へ戻ろう


   市場予想では、金曜日日本時間21時30分に発表される4月の米雇用統計で、失業率は5.8%と前月から0.2%ポイント改善、非農業部門雇用者数は前月比97.8万人増と2カ月連続で90万人の大台を超える見通し。市場予想通りであれば、雇用回復ペースが加速するとの期待は広がる。なお、失業率は失業者の定義に応じてU1からU6までの6段階に分別される。一般的に報道される失業率(U3)は3月時点で6.0%。一方、フルタイムで働きたいが、パートタイムに甘んじている、職探しをあきらめている、現在は働けないが用意はあるなど、全民間労働力に対する失業者の割合を表すとされる失業率(U6)は3月の10.7%から小幅に悪化すると市場は見込む。コロナ禍前であればU3は3%台後半、U6は7%を下回る低水準で推移していたが、失業率だけでなく、労働参加率や賃金上昇率など「広範囲で包摂的な」最大雇用を目指す米連邦準備理事会(FRB)が早期緩和調整に動くとの期待にはつながりにくい。
   指標発表前には、米連邦公開市場委員会(FOMC)で今年の投票権を有するリッチモンド連銀のバーキン総裁が講演を行う。同総裁は3月下旬にニュース通信社とのインタビューで、「金融政策をめぐる議論や決定は経済指標の動向に左右されるとして、見通しではなく「結果」が重要である」と強調。今月3日のニュース専門放送局のインタビューに対しては、「人口に対する雇用率を緊密に注視している」と指摘した。3月の雇用率は57.8%と昨年12月(57.4%)から改善したが、コロナ禍前は61.1%だったことに鑑みれば、「緩やかな進展でしかない」と現状を判断。量的緩和の段階的縮小を実施する前に大幅な進展を見たいと述べた。
   ドル円は金曜日のアジア市場で、109円ちょうどを挟みこう着している。ドル安地合いのなか、3月31日高値110円96銭から4月23日安値107円46銭までの下げ幅(3円50銭)に対する61.8%戻し109.62円が5月3日高値109円69銭とほぼ合致していることに着目し、同水準を上抜ければドル高/円安の基調に戻る可能性が高まるとみている。米雇用統計が市場予想を下振れても、4月23日安値107円46銭を下値メドに底打ちが確認されれば、6月15、16日開催の次回FOMCを控えてドル高?円安の基調が続くと予想する。
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