7月のRBA理事会へ向けて、豪ドルは底堅い展開か
2021-05-06
■ 今回のRBA理事会は金融政策の現状維持が決定された一方、経済見通しは改善方向へ修正
■ 新型コロナの状況次第だが、当面の間、豪ドルは底堅い展開が見込まれる
本稿では、5月4日に開催された豪中銀(RBA)理事会の結果をまとめる。RBAは今会合で、政策金利と3年国債利回り目標を0.1%で現状維持とし、2024年半ばまで政策金利を据え置く方針を改めて示した。一方で、2021年の経済成長率見通しを4.75%へ引き上げたほか、失業率は2022年末には4.5%前後に低下を見込むなど、2月時点の四半期金融政策報告で示した水準から、改善方向へ修正した。ただし、物価上昇率見通しは、今年4-6月期に前年比3%を上回るとしつつも、2021年通年では同1.5%にとどまるなど、物価上昇圧力が限定的との見方は変えていない。なお、これらの見通しの詳細は5月7日公表の同報告で示される。
RBAが公表した声明の中では、今後へ向けて3点ほど確認しておきたい。すなわち、(1)豪住宅市場は過熱感があり、注視が必要である点、(2)完全雇用とインフレの目標達成に向けた助けとして、委員会はさらなる債券購入も考慮している点、(3)7月理事会で債券購入プログラムの方針について検討する点、である。(1)では、5月5日公表の3月住宅着工許可件数が前月比17.4%増加となるなど、住宅市場の過熱感を示す指標が確認されている。そのため、過熱感を抑えるための規制が導入された場合、一時的に豪ドル安に寄与する可能性に注意が必要だろう。対して、(2)では米連邦準備理事会(FRB)と同じく、拙速な金融引き締めを恐れている点が強調された。ただし、豪経済の力強さが市場の金融引き締め観測を助長する可能性もあるため、(3)の方針検討について、敢えて声明に記載したとみている。検討される主な内容は、現在RBAが目標としている3年国債の銘柄を、2024年4月償還債から同年11月償還債へ変更することが挙げられる。現在のままで目標とする銘柄を変更しない場合は、RBAが金融引き締めへ動き始めたと解釈され、豪金利上昇や豪ドル高で市場は反応しよう。一方、7月理事会で変更が決まれば、市場はRBAの金融緩和姿勢を追認するとみられる。
豪ドルは5月理事会の結果を受けて上昇一服となったものの、底堅い資源価格が下値を支える状況は続く。豪州内の新型コロナウイルス感染状況が一段と収束へ向かえば、RBAが金融引き締め姿勢へ転換するとの観測が広がり、豪ドル円は2017年9月高値(90円30銭)に向けて徐々に上昇余地を広げる見込み。ただ、豪国債イールドカーブで既に2023年前半の利上げ開始が織り込まれていることもあり、豪ドルの上昇ピッチ自体は緩やかとなろう。