FOMC:金融政策正常化の判断は先送り
2021-04-30
■ FOMCでは政策方針は据え置かれたものの、景気、物価判断は引き上げられた
■ 金融市場では、経済データに基づいてテーパリング観測が揺れ動く傾向が強まるだろう
4月27、28日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利目標、資産購入目標額ともに据え置かれた。声明文では、「ワクチン接種の進展と強力な政策支援のなか経済活動や雇用の指標が力強さを増した」と景気認識が上方修正され、インフレ率も「主に一時的な要因を反映し、上昇している」と判断が引き上げられたものの、金融政策に関しては全文据え置かれた。FOMC後の会見で、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、「経済は目標水準には程遠く、さらに著しい進展遂げるにはしばらくかかる」と述べ、資産購入の段階的縮小(テーパリング)の議論を始めるには時期尚早であるとの従来の認識を踏襲した。議長は「労働力の供給と需要が均衡するには、まだ数カ月かかるだろう」とも述べている。
FOMCは景気回復ペースの加速を見通しているものの、物価の急上昇は一時的な現象である点、雇用者数が2020年2月の水準をなお大きく下回っている点など、政策目標に対する認識は従前と変わっていない。また、「経済が完全に持ち直すまで政策支援を継続する」方針を堅持し、金融政策正常化に関する手掛かりを示さなかった。判断が先送りされた格好となったが、政策正常化のタイミングが引き続き関心事項である点は変わらないだろう。今回のFOMCで雇用判断が上方修正され、政策目標水準との乖離の大きさやその解消時期などが今後の焦点となる。金融市場では、雇用、物価を中心に経済指標の重要性が増し、FRBは公言していないものの、経済データに基づいてテーパリング観測が揺れ動く傾向が強まると考えられる。「経済見通しの概要(Summary of Economic Projection、SEP)」が示される次回のFOMCでは、さらなる雇用増加や物価上昇ペースの加速が確認されている可能性が高い。
なお、パウエルFRB議長は、政策対応との関連性を否定したうえで「一部の資産価格は高く、資本市場が少し泡立っているように(a bit frothy)見える」、「住宅市場を注意深く監視している」などと述べ、将来の政策変更の布石とも受け止められるような資産価格に関する言及が増えた点も注目される。