依然として日銀の金融緩和に出口はみえない
2021-04-29
■ 黒田総裁の任期を超えても物価目標は未達の見込みで、依然、金融緩和の出口はみえない
■ 経済活動への制約が予定より長引けば、日銀に追加緩和を求める声が強まる可能性も
日銀は4月26、27日に金融政策決定会合を開催し、金融政策の現状維持を決定。前回会合(3月18、19日)では政策点検結果を公表したうえで、より効果的で持続的な金融緩和を実施すべく、貸出促進付利制度の創設、長期金利変動許容幅の明確化、上場投資信託(ETF)購入の柔軟化、といった修正策を決定していたこともあり、大方の想定通りの結果となった。
また、1、4、7、10月の会合で公表される「経済?物価情勢の展望」(展望レポート)では、GDP見通しが予想期間全て(20-22年度)にわたって前回(1月時点)から上方修正されたうえ、新たに示す23年度は前年度比1.3%増とされた。物価見通し(生鮮食品を除く消費者物価指数)についても、21年度こそ携帯通信料引き下げの影響を踏まえて同0.5%上昇から同0.1%上昇に下方修正されたものの、20年度と22年度は0.1%ポイントずつ上方修正され、23年度は同1.0%上昇とされた。景気回復が徐々に物価を押し上げるとのシナリオを維持したうえ、景気の先行きに対して楽観とは程遠いものの、下振れリスクへの警戒がやや緩和した印象。しかしながら、黒田総裁の任期(23年4月)を超えても2%の物価目標は達成できないとの見通しになっており、依然として長期に及ぶ大規模金融緩和に出口はみえない。
こうしたなか、現在、東京、京都、大阪、兵庫の4都府県を対象に3度目となる「緊急事態宣言」が発令されている(4月25日から5月11日まで)。2度目の同宣言とそれに加えた「まん延防止等重点措置」は、飲食業の時短営業要請に絞った対策との印象が強く、その結果、解除(3月21日)からわずか約1カ月で3度目の発令に迫られたのではないだろうか。したがって今回は、百貨店やショッピングセンターなどへの休業要請や鉄道?バスの減便依頼など、かなり広範囲に対策が及んでいる。しかし、すでに隣接する対象外区域の都市に多くの人が流入しているとの報道もあり、対象区域拡大や期間延長も想定されよう。仮に、5月11日以降も経済活動への制約が続き、国内景気の低迷長期化が懸念される状況となれば、日銀に対して追加緩和を求める声が強まることも考えられる。