ドイツの景気回復と政局混迷
2021-04-28
■ ドイツ経済はマイナス成長に戻るが、4‐6月期以降はプラス成長へ向かう見通し
■ ユーロ高/ドル安に一服感は広がるが、政局混迷と政策期待が対立し、もみ合い相場に転じよう
ドイツ(独)Ifo経済研究所が昨日発表した、4月の企業景況感指数は96.8と前月比0.2ポイント上昇し約3年ぶりの高水準を記録したが、6カ月先を示す期待指数は99.5と市場予想に反して前月比低下となった。同研究所によれば、新型コロナウイルス感染第3波と中間製品のボトルネックが景気回復を阻んでいるとの認識。新規感染者が急増するなど感染拡大抑制に苦戦しており、メルケル首相は先週末、特に感染率の高い地域に週末の厳しい外出制限を国民に要請。ショルツ財務相は月末までの規制解除は見通せないとして、正常化に向けてタイムテーブルを策定するべきとの考えを示した。なお、欧州委員会は、欧州連合(EU)が7月半ばまでに域内成人の70%にワクチン接種し、集団免疫を達成する目標を掲げている。
市場予想によれば、30日発表の独1‐3月期実質GDP(速報値)は前期比1.5%減と3四半期ぶりのマイナス成長に落ち込む見通し。都市封鎖の影響で個人消費の低迷は続くが、民間投資、政府支出、輸出が下支えし、4‐6月期以降はプラス成長に戻る見込み。なお、政府は27日に最新の政府経済予測を発表する。昨年10‐12月期が予想以上に良好だったとして、今年の成長率予想は3.5%と1月時点(3.0%)から上方修正されるとの報道もあるが、新型コロナワクチンの接種進展や半導体の供給制約が解消されるとの期待は大きい。
為替市場では、ユーロドルが1.21ドル台前半まで上昇後、1.20ドル台後半へ上げ幅を縮小。日本時間29日早朝に発表される米金融政策を控えて、ユーロ高?ドル安に一服感が広がりつつある。9月に独総選挙後を控えて与野党は首相候補を擁立したが、最新の世論調査では環境保護を掲げる「緑の党」の支持率が6%ポイント上昇し28%と、与党統一会派のキリスト教民主?社会同盟CDU/CSU(2%ポイント低下の27%)を上回る。一方、13%と大きく水をあけられた社会民主党(SPD)のショルツ候補は、統一会派と組まず連立政権を樹立できるとしており、「緑の党」との連携も視野に入れているとみられ、同国の左傾化が警戒される。こうしたなか、EUは景気回復に向けた復興基金の資金分配を7月に始める予定で、30日が提出期限とされる加盟国の復興計画が待たれる。当面のユーロは、政局混迷と政策期待が対立し、高値圏でのもみ合いに転じると予想する。