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金融政策正常化論争はECBより本格化か

2021-04-23

■ カナダ中銀は資産購入ペースの減速を決定し、利上げ開始時期の前倒しを示唆した

■ 6月に期限を迎えるPEPPの運用は、今後主要国が直面する政策正常化論争の前哨戦でもある


    昨日、カナダ(加)中銀が国債買い入れ目標を週40億加ドルから30億加ドルへ縮小することを決定し、同時に経済スラックの解消時期を2023年から2022年後半に修正し、利上げ開始時期の前倒しを示唆した。金融政策正常化は、今後他国でも意識されることになるだろう。
   来週にかけて、日米欧では金融政策決定会合が行われる。今回の会合では政策変更は見込まれておらず、日本を除けば、四半期に一度の経済見通しも発表されないため、市場での関心も3月よりも低い。3月以降、米連邦準備理事会(FRB)の政策姿勢に目立った変化が見られないため、筆者は、金融政策正常化の観点で、27、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)よりも今晩行われる欧州中銀(ECB)理事会に注目している。
   ECBは、3月の理事会で、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)について、6月まで「かなり速いペースで」買い入れることを決定した。この決定後、欧州では長期金利上昇が抑制されてきたが、ドイツ10年国債利回りは2月末以来の水準まで再上昇している。資金調達コスト(すなわち長期金利)の上昇抑制に向けたECBの政策姿勢が改めて問われよう。また、4月8日に公表された3月10、11開催日分のECB議事要旨で、資産購入ペース加速がPEPPの規模拡大ではなく制度運用の柔軟化であること、資金調達コスト上昇の抑制後に購入ペースを減速することについて、メンバーの間で認識が共有されていたことが明らかとなっている。今回の理事会では、足元で上昇しつつある長期金利の抑制に主眼が置かれ、7月以降のPEPPに関する方針が示される可能性は低いものの、2カ月余りで期限を迎えるため、6月の理事会までには結論が求められることになる。
   筆者は、加中銀以上に諸外国への波及効果が大きいECBでの7月以降のPEPP購入ペース減速の行方は、主要国の中央銀行が直面する金融政策正常化の前哨戦だと考えている。金利の急上昇を回避しつつ正常化を進めるため、どのような工程表を示し、どうコミュニケーションを図るのか。日米に先行にして、まずECBに回答権が巡ってくることになりそうだ。
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