FRB高官の発言は、金融政策の動向を巡る手掛かりに
2021-04-15
■ 3月FOMC後のFRB高官発言をまとめると、筆者には「資産価格上昇を容認」したように見える
3月17日以降、カンザスシティ地区連銀総裁を除く17名の発言が伝わったが、珍しくメンバーの見解に際立った違いはみられない。そして、その見解をまとめると、筆者には「資産価格の上昇を容認」したように見える。実際、3月FOMC後のS&P500の騰落率はプラス4.2%(3月17日~4月13日)と上昇し、過去最高値を更新している。この間、FRB高官の発言では「米国景気は回復傾向が続く」との見解で一致する。新型コロナワクチン普及に伴う経済正常化の進展が前提だが、FRBの2021年経済成長率見通しはプラス6.5%と、1984年以来の高水準が見込まれる。一方で、「夏にかけて物価上昇圧力が強まっても、それは一時的」であり、「労働市場が新型コロナ禍前である昨年2月の状況に戻るのは、まだ先」との見方が示され、「当面は金融緩和継続が適切」との考えが概ね共有されている。米国企業業績の先行き次第ではあるものの、こうした状態が続けば、米国株式市場の一部で「株価がバブルの状態にあるのではないかという疑念」が絶えることは無いのではないか。
唯一異彩を放つのが、ダラス地区連銀総裁(2021年は投票権なし)。3月23日の講演で「FRBは早ければ、来年にも利上げに踏み切る」と、政策金利の早期引き上げに言及した。また、FRBが公表した資料で来年利上げの見通しを示した4名のうち、自身がその中の1人であることも明言。現時点で最も早期利上げに積極的なFRB高官は、ダラス地区連銀総裁という評価が定着した。今後は、米国内の新型コロナワクチン接種率の上昇に伴い、利上げ積極派も徐々に増える見込み。なお、セントルイス地区連銀総裁は、4月12日の講演で「テーパリング(債券購入策の段階的縮小)を検討する目安は、ワクチン接種率75%」と述べている。
■ 今後は新型コロナワクチン接種率の上昇に伴い、利上げ積極派のFRB高官が増えると見込む
本稿では、3月16、17日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)以降の時期に絞って、米連邦準備理事会(FRB)高官の発言をまとめる。一般的に「FRB高官」とは、FRB議長(1名)、同副議長(2名)、同理事(3名)、地区連銀総裁(12名)の計18名(本稿執筆時点、理事が1名空席)を指すことが多い。一方、FOMCで金融政策決定の投票権を持つのは11名(本来は12名)に限られ、NY地区連銀総裁を除く11の地区連銀総裁は、毎年輪番制で投票を担当する。2021年に投票権を持つ地区連銀は、NY(常任)、アトランタ、シカゴ、サンフランシスコ、リッチモンドの5つ。FRB高官の発言は、投票権の有無でも注目度が変わってくる。
3月17日以降、カンザスシティ地区連銀総裁を除く17名の発言が伝わったが、珍しくメンバーの見解に際立った違いはみられない。そして、その見解をまとめると、筆者には「資産価格の上昇を容認」したように見える。実際、3月FOMC後のS&P500の騰落率はプラス4.2%(3月17日~4月13日)と上昇し、過去最高値を更新している。この間、FRB高官の発言では「米国景気は回復傾向が続く」との見解で一致する。新型コロナワクチン普及に伴う経済正常化の進展が前提だが、FRBの2021年経済成長率見通しはプラス6.5%と、1984年以来の高水準が見込まれる。一方で、「夏にかけて物価上昇圧力が強まっても、それは一時的」であり、「労働市場が新型コロナ禍前である昨年2月の状況に戻るのは、まだ先」との見方が示され、「当面は金融緩和継続が適切」との考えが概ね共有されている。米国企業業績の先行き次第ではあるものの、こうした状態が続けば、米国株式市場の一部で「株価がバブルの状態にあるのではないかという疑念」が絶えることは無いのではないか。
唯一異彩を放つのが、ダラス地区連銀総裁(2021年は投票権なし)。3月23日の講演で「FRBは早ければ、来年にも利上げに踏み切る」と、政策金利の早期引き上げに言及した。また、FRBが公表した資料で来年利上げの見通しを示した4名のうち、自身がその中の1人であることも明言。現時点で最も早期利上げに積極的なFRB高官は、ダラス地区連銀総裁という評価が定着した。今後は、米国内の新型コロナワクチン接種率の上昇に伴い、利上げ積極派も徐々に増える見込み。なお、セントルイス地区連銀総裁は、4月12日の講演で「テーパリング(債券購入策の段階的縮小)を検討する目安は、ワクチン接種率75%」と述べている。