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米為替報告書について

2021-04-14

■ 米財務省は半期に一度の為替報告書で、判定基準の下、「為替操作国」「監視対象国」を認定

■ 中国は「為替操作国」に認定されない方針、同報告書は2カ国間の通商交渉における有効な手段


   米財務省は半期に一度、為替報告書を公表する。(1)対米経常黒字が国内総生産(GDP)比2%以上、(2)対米貿易黒字額が年間200億ドル以上、(3)為替市場への持続的介入で総額がGDP比2%以上、を判断基準とし、すべてを満たしたと判断する国・地域があれば「為替操作国」、2つと判断すれば「監視対象国」とみなされる。昨年12月16日公表の同書では、20カ国地域を対象に昨年6月までの4四半期の為替慣行を調査した内容が明らかにされ、米財務省は新たにスイスとベトナムを「為替操作国」に認定。実際、スイス中銀は2020年上半期に900億スイスフラン超の為替介入を実施したが、「どのような形の為替操作にも関与していない」とする声明を発表。国内経済の競争力を不当に操作するためではなく、物価安定に向けて為替介入でスイスフラン売り、ドル買いを実施し、デフレリスクを回避する意向を高めた。「監視対象国」については、対米貿易黒字を抱える日本と中国など、韓国、ドイツ、イタリア、シンガポール、マレーシアに加え、タイ、台湾、インドをあわせた10カ国が認定された。
  イエレン米財務長官は、今年1月に上院財政委員会で開かれた承認公聴会で、「競争上の優位を得るために、米国が弱い通貨を目指すことはない」と発言し、人為的に通貨価値を操作する外国に反対していく姿勢を示し通貨介入をけん制した。次回の為替報告書は4月15日が公表期限。中国は、1992-1994年と2019年8月に「為替操作国」に認定されたが、昨日、同長官は今回も「為替操作国」には認定しない方針を固めたという。足元は緩やかな人民元安、ドル高が進行しているが、昨年5月以降では人民元は対ドルで10%超上昇しており、バイデン政権が人民元安をけん制する様子はうかがえない。ただ、人民元安が急ピッチで進行すれば、同報告書が当該国間の通商交渉において緊張感を高める有効な手段となる可能性もある。「為替操作国」に認定された当該国が直ちに制裁を受けることはないが、為替レートが国際収支の不均衡を是正する役割を果たすことに変わりはない。なお、2010-2011年には、米国の金融緩和策はドル安につながるとして、ブラジル政府が「通貨戦争」とけん制したが、足元のドル高はドル建て債務が重しとなる新興国や途上国の景気回復を遅らせる悪循環になりかねないとの懸念もある。
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