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日本株を見通すうえで工作機械受注に注目

2021-04-13

■ 工作機械受注額の増減は設備投資動向を反映し、景気に対する先行性や循環性が強い

■ 出遅れていた欧米や国内からの受注回復により、今後も緩やかな増勢基調が見込まれよう


   日本工作機械工業会(日工会)によれば、工作機械受注額は2018年の約1.8兆円から2019年には約1.2兆円、2020年には新型コロナウイルス感染拡大による世界景気の悪化を受けて約0.9兆円まで落ち込んだ。日本の製造業売上高*1は2018年が約413兆円、2019年が約401兆円となっており、そのうち0.3-0.4%程度を占めるに過ぎない。しかし、工作機械とは自動車、スマートフォンや家電といったデジタル機器などに使用される金属製精密部品の加工・切削に用いられ、あらゆる製造業に不可欠なことから「マザーマシン(母なる機械)」と呼ばれており、受注額の増減は企業の設備投資動向を反映するとみられている。

   2月の工作機械受注額(確報値)は前年比36.7%増の1056億円と、4カ月連続で前年を上回った。新型コロナ感染拡大に伴い比較対象となる前年実績が低いため伸び率は大きくなりやすいうえ、今年は春節休暇中の規制や旅行の自粛が要請されたことで例年ほど中国の工場稼働率が落ち込まなかったことも幸いしていようが、好不況の目安とされる1000億円を19カ月ぶりに上回った。国・地域別では、中国向けが同409.4%と突出するも、北米(同3.4%増)や欧州(同11.4%増)向けもプラスに転じている。また、国内からの受注も同4.8%減と1月(同10.8%減)からは減少幅が縮小しており、年度末に向けた受注も見込まれる3月は、27カ月ぶりにプラス転換する公算が大きい。出遅れていた欧米や国内からの受注回復が支えとなり、2021年の年間受注額は日工会の推計(1.2兆円)を超える可能性が出てきたといえよう。

  企業の設備投資は景気サイクルを生み出すため、工作機械受注額の推移は景気に対する先行性や循環性が強い。よって、TOPIXの12カ月先予想1株当たり利益(EPS)*2とそれぞれ前年比の伸びを比較すると、連動性が高くなっている。また、過去を振り返ると、底入れ後2年半程度は回復基調が続く傾向があるが、今次局面では2020年5月の底入れからまだ1年も経過していないため、今後も予想EPSの回復に伴うTOPIXの上昇が期待できよう。日本株を見通すうえで軽視できない指標といえる。
*1 総務省・経済産業省「2020年経済構造実体調査」(1次集計、2021年3月31日発表)
*2 I/B/E/S予想(Refinitiv)
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