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2021年4月第3週(12~16日)の相場展望

2021-04-12

バイデン大統領が派手に打ち出した、鳴り物入りの2兆ドル規模のインフラ投資計画は、10年という長期に渡って実施される計画で、政権下の専属チームによる計画作成がこれから詳細に着手するようだ。この対策はゆっくりとしたペースで作成されるものであることが判明し、市場は今のところ大きくは捉えておらず、報道された直後に反応したのみであった。米国10年債長期金利も肩透かしから債券に利食いが入っている様子で軟調気味。この計画は、今後の中間選挙に向けての下地と見なされているようだ。その長期金利軟調を受けて、株価は最高値付近で推移している。

その米国以上に欧州の株価は堅調で、ドイツやフランスがリードし最高値更新を続けている。その背景には、ECBが新型コロナウイルスに断固として対抗する姿勢を打ち出していることやユーロ相場の弱さが理由として上げられる。米国の投資会社アルケゴスというファンド会社への投資で日本の野村證券と同じく大きな損失を出した、スイスのクレディスイスグループなど、他の欧州金融機関への悪影響を想定しているはずだが、そこには目もくれず上昇し続けている。欧州内で、新型コロナウイルスの影響からロックダウンが延長されている国々が増えているが、ロックダウン=低金利=株高、という構図となっているようでマネーの行き場に偏りが見られていることは、リスクも増大していることと認識すべきではないか。リスク増大を認識している投資家は、リスク回避の投資先となっている金に加えて仮想通貨へマネーを動かしているのも気になるところ。

金価格は1700ドル割れからはやや持ち直し、底堅めをしているように感じられる。今年3月初めに1670ドル台の安値を付けて以降1756ドル付近まで一旦買われたが、再度1670ドル台へと下落した後上昇し3月高値の1756ドルを上に突破した。チャート形状は綺麗なダブルボトムの形だ。その上、昨年末からの短期下落トレンドを上にブレイクしたことで、今年に入ってからの第3波の下げが終了となる可能性も出てきた(赤のライン)。ただここから上は下落時に出来高が多かったレベルに入ってくるので、上昇するとしてももみ合いながらの動きか。テクニカルで底値確認の可能性が高まったことで、一旦1790ドルを目指す展開となろうが、まず一目均衡表の雲の下限である1770ドルの抵抗をまず試す動きの可能性が高まる。1790付近には75日移動平均線からの抵抗があり、下げて1740ドルを下に割り込むとダブルボトムの影響は弱まり、1700-1750のもみ合いとなりそう。

(Gold日足チャート)


ユーロドルは、金のチャートと似たようなチャート形状をしており、今年2月後半高値からの下落トレンドラインを上にブレイクしている。米国雇用統計後に米国10年物金利に利食いが入ったことで、ドルが下落に転じたことが大きく影響している。イースタを挟んでドルがほぼ利食い優勢となり、市場関係者からは米国経済に対するワクチン接種の好影響や経済対策など楽観的な見方の一部は既に織り込まれた意見が多く、金利低下と共にドルは下落に転じた。ドル円は直近の抵抗だった110円を割り込み、ユーロドルは短期の下落トレンドを上にしっかりブレイクしたことに加え、ドル単独での下げが強まったことが主因で、逆にユーロドルが買われている。ドルの受け皿として機能しているようだ。米国長期金利の下げもここからは大きくはなりそうもなく、ドルもここからは下げ渋りそうで、しばらくの間レンジ内のもみ合い相場形成の公算が強いだろう。欧州主要国はロックダウン期間中であり、金曜日のドイツやフランスの鉱工業生産に影響を及ぼした可能性がある。ロックダウンの延長を決めた国も出始めており、今後の新型コロナ感染者推移が気になるところでユーロの上昇も限定的かもしれない。ユーロドルの高値目途は2月安値から3月高値の1.1950-1.1990の間で、上に抜けると1.2の大台を回復していきそう。下は1.1815付近に小さなサポートがあり、1.1785を下抜けするともう一段の下値トライを想定する。

(ユーロドル日足チャート)


今週は、米国では国債の入札が複数控えている。スケジュールは、12日(月)に3年債と5年債、13日(火)には30年債の入札が予定されている。先日の新経済対策への国債入札が増加しており、需給面からの不安が露呈されないかドル相場への影響が大きくなる可能性がある。またパウエル総裁の発言やベージュブックも水曜日に控えており、相まって金利動向への影響を及ぼすのかどうか。大きめのプラスが予想される米国経済統計の中では、小売売上高や住宅関連の指標が注目されている。

欧州と比較して、一足早くロックダウンを緩和し始めた英国では、GDPや鉱工業生産指数が発表される。ポンドは英国の製薬大手アストラゼネカ製のワクチンへの懸念や英国投資ファンドの日本の東芝に対する巨大買収提案を背景に売りが進んでおり、ポンド円の下落がポンド全般の動きにもやや影響を及ぼしているようだ。需給面と経済活動再開のファンダメンタルから綱引きとなっているが、テクニカルからは売りが強くなっていることで、経済指標等は注目していきたい。欧州ではドイツのZEW景況感指数やEUの鉱工業生産指数の発表が控える。

先週中は一貫して下落した中国株はアジア全体の相場へ影響を及ぼした。金曜日に1-3月期のGDPや3月の鉱工業生産や小売売上高が発表される。全般に大幅なプラスが予想されていることで、結果によっては株価の下支えから買戻しとなることも考えられる。
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