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世界経済:IMFは経済の正常化を見据える

2021-04-08

■ IMFは2021、2022年の世界経済の成長率見通しを上方修正

■ 景気後退後の影響や政策対応の副作用を見据えた、今後の経済運営の課題も提示されている


    国際通貨基金(IMF)は6日、最新の「世界経済見通し(World Economic Outlook)」を公表した。ゲオルギエワ専務理事が事前に示唆していた通り、世界経済の成長率を3四半期連続で上方修正し、2021年を5.5%から6.0%へ、2022年を4.2%から4.4%へそれぞれ引き上げた。主に、先進国での新型コロナウイルスワクチンの普及や米国の1.9兆ドル規模の経済対策などが見通しに反映されたことに基づく。ただ同時に、地域間?業種間の成長格差、不平等の拡大、労働市場の脆弱性など多くの問題も提起されている。
   今回のレポートでは、新型コロナ感染症パンデミックが及ぼす経済への中長期的な影響や、前例のない金融政策の波及効果なども分析されている。中長期的影響として、景気後退後の生産性の低下、すなわち潜在成長率低下の可能性を指摘。今回の景気後退は、製造業に起因する通常の景気循環とは異なり、レジャー、外食など一部サービス業の需要喪失が特に大きく、コロナ禍以前の水準への回復も見込み難いため、これら業種を中心に経営資源(ヒト、モノ、カネ)再配分の必要性が高い。調整過程で生産性の低下を伴い、調整期間が中長期的な成長ペースにも影響を及ぼし得るとまとめている。また、影響度は地域差があり、政策余力の乏しい新興国、低所得国の方が先進国よりも影響が大きくなると分析している。
   金融政策の波及効果では、主に先進国の財政?金融政策により生じている先進国の長期金利上昇が新興国の経済?金融市場に及ぼす影響が考察されている。景気回復に起因する金利上昇は悪影響が小さく、先進国の景気回復の恩恵が勝る一方、先進国の金融引き締め観測に基づく金利上昇は、新興国からの急激な資本流出を促し、新興国の経済?金融市場に悪影響を及ぼし得る、と結論づけている。
今回の見通しでは、経済正常化後を見据えた政策提言が目立つ。危機脱却にメドがつき、長期停滞や政策の副作用の回避などが今後の経済運営の課題となることを示唆している。
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