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バイデン米大統領の成長戦略実現には不透明感が強い

2021-04-05

■ バイデン米大統領は、「中国との競争に打ち勝つための計画」としてインフラ投資計画を発表の目が向き始めたか

■ ただ、法案成立までの道のりは不透明感が強く、必ずしも株式市場にとって好材料とはいえない


   バイデン米大統領は3月31日、「米国雇用計画」を発表。演説では「数百万人の雇用を生み、中国との競争に打ち勝つための計画」と強調し、インフラ投資に重点が置かれている。
   今回発表された計画の主な内容は、電気自動車(EV)を含む輸送インフラに6210億ドル、介護インフラに4000億ドル、半導体の国内生産強化や供給網の強化など製造業および中小企業の活性化に3000億ドル、電力関連インフラ(クリーンエネルギー等)に1000億ドルなど。向こう8年間で総額は2.25兆ドルとなり、毎年GDPの約1%程度の投資が続くことになる。一方、財源については、法人税率の引き上げ(21%から28%へ)や多国籍企業の海外収益に対する課税強化(従前の2倍となる21%)、大企業の会計上の利益に対する最低15%の課税導入(ミニマム税)など、15年間の企業向け増税が示されている。
   ただ、共和党は景気回復に水を差す恐れのある企業増税には反対姿勢であるうえ、民主党内でも財政支出の優先度や増税時期を巡って隔たりが大きい。また、この計画は第1弾であり、医療保険や子育てといった家計向けの対策が盛り込まれる第2弾が4月中には発表される予定で、規模は第1弾との総額で3-4兆ドルに達するとみられる。財源は、第1弾で企業向け増税に限定したことを踏まえると、第2弾は所得税の最高税率引き上げ(37%から39.6%)や年収40万ドル以上の給与税引き上げなど、バイデン氏が大統領選で掲げた富裕層の個人向け増税計画が提示されるのではないだろうか。さすれば、反対勢力の抵抗は一段と強まろう。
   バイデン米大統領は、超党派の賛同が得られやすいこともあり、対中強硬姿勢の一環として計画の実現を訴えかけているとみられる。しかし、争点が財政赤字拡大や増税である以上、そのロジックで押し切るのは難しいだろう。計画の規模が縮小されれば景気浮揚効果も弱まる一方、計画通りの増税ならば景気への悪影響、増税規模が縮小されれば財源を補てんするための国債増発が懸念され、株式市場にとっては判断の難しい材料といえよう。
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