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トルコリラは再び最安値更新か

2021-04-02

■ エルドアン大統領は、トルコ中銀総裁を利上げ決定後に解任
■ 中銀の信認が低下、物価上昇のなか利上げの難しさも示唆。リラは再び最安値更新の可能性も

   トルコリラが下落している。トルコ中銀のアーバル総裁が3月20日に解任され、週明け22日には対ドルで7.21リラ台後半から8.17リラ台半ば、対円で15円台前半から13円台前半へ急落した。トルコ中銀は独立した組織ではあるものの、総裁及び副総裁の任命権を大統領が持つ。エルドアン大統領は景気支援の低金利維持を中銀に再三要求してきたが、アーバル前総裁は「物価安定のためあらゆる手段を使用する」と宣言し、昨年11月の就任直後に15.00%への利上げを実施した。大統領に利上げは物価抑制のための「苦い薬」と認めさせたことは海外投資家にも歓迎され、就任前の昨年11月6日に史上最安値(8.57リラ台後半、12円ちょうど辺り)を付けていたリラは、今年2月16日に6.88リラ台前半、15円台前半と2020年7月、同8月以来の高値へ上昇した。だが、今年2月の消費者物価上昇率が前年比15.61%と2019年以来の伸びに加速したことを受け、3月18日に政策金利を17.00%から19.00%へ引き上げた2日後にアーバル氏は解任された。2年で3人目の中銀総裁解任から、中銀の信認低下と利上げの難しさが示され、足元でリラは8.45リラ台前半、13円ちょうど近くと過去最安値に接近している。
    カブジュオール新総裁は「利上げが物価上昇をもたらす」と大統領寄りの主張をしてきた与党?公正発展党(AKP)の元議員である。就任後、直ちに利下げを実施するわけではないと市場の鎮静化を図ったが、リラの下落は止まらず。結局、「物価上昇率の恒常的な低下が指標で確認されるまで、政策金利は物価上昇率を上回る水準に維持する」と主張を180度変え、市場からの信認をさらに失う結果となっている。通貨安による輸入物価高騰に加え、昨年の新型コロナウイルス感染拡大時との比較になる、3月以降の消費者物価はさらに上昇する公算が大きい。トルコ国内では物価高騰と新型コロナへの対応のまずさからエルドアン大統領の支持率が低下している。こうしたなか、景気最優先の大統領は追加利上げを許さないのはもちろん、利下げすら要求しかねない。4月5日の3月の消費者物価発表、15日の金融政策委員会へ注目が集まるが、リラは再び史上最安値を更新する可能性が高まっている。

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