先進国間でも広がる金融政策スタンスの相違
2021-04-01
■ 一部の新興国は利上げに転じたが、先進国の間でも景気認識や金利上昇への許容度が乖離
米連邦準備理事会(FRB)は、景気回復を見込み、緩やかなペースでの長期金利上昇は許容している。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、「参加者の政策金利見通し」の中央値が2023年末まで0.00-0.25%で変わらず、約3年間政策金利を据え置くことを示唆された一方で、「参加者の経済見通しに対する不確実性・リスク評価」を見ると、昨年12月時点よりも見通しの下振れを見込む参加者の数が減少し、上振れを見込む参加者が増加している。この結果、参加者のリスクウェイトDIは、実質GDP成長率は9四半期ぶり、個人消費支出(PCE)デフレーターは8四半期ぶりにプラスに転換した。パウエルFRB議長は、米経済は「完全回復には程遠い」ことを理由に金融緩和を継続する考えを堅持しているが、長期金利上昇については、市場が「無秩序な状況」にならない限り対応を見送る姿勢を示している。リスクバランスの逆転は、今後の政策転換への布石になり得る変化で注目に値しよう。
対照的に、欧州中銀(ECB)は長期金利上昇への強い警戒を示している。3月のECB理事会では、次の四半期(4-6月期)にかけて、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)による資産購入を加速することを決定。新型コロナ感染第3波による景気回復の遅れが懸念されるなか、米国に連動する長期金利上昇を抑制する姿勢を明確にした。スタッフ経済見通しでは、2021年の一時的なインフレを除けば、2023年まで実質GDP成長率、消費者物価指数上昇率は昨年12月時点の見通しが概ね据え置かれ、依然として慎重な景気認識が示されている。
この結果、3月以降、米独長期金利の連動性が崩れており、長期金利差が拡大し、ドル高ユーロ安が進行している。いずれも米欧の金融政策姿勢の乖離に起因するため、筆者は、景気回復とともにECBが次の対応が示すまで、この傾向は続きやすいと考えている。
*1 詳細はPRESTIA Insight 2021.03.29「一部の新興国中銀は、3月に利上げサイクルを開始へ」
■ 景気回復が見込まれ、長期金利上昇への許容度も高いドルが上昇しやすい地合いか
米連邦準備理事会(FRB)は、景気回復を見込み、緩やかなペースでの長期金利上昇は許容している。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、「参加者の政策金利見通し」の中央値が2023年末まで0.00-0.25%で変わらず、約3年間政策金利を据え置くことを示唆された一方で、「参加者の経済見通しに対する不確実性・リスク評価」を見ると、昨年12月時点よりも見通しの下振れを見込む参加者の数が減少し、上振れを見込む参加者が増加している。この結果、参加者のリスクウェイトDIは、実質GDP成長率は9四半期ぶり、個人消費支出(PCE)デフレーターは8四半期ぶりにプラスに転換した。パウエルFRB議長は、米経済は「完全回復には程遠い」ことを理由に金融緩和を継続する考えを堅持しているが、長期金利上昇については、市場が「無秩序な状況」にならない限り対応を見送る姿勢を示している。リスクバランスの逆転は、今後の政策転換への布石になり得る変化で注目に値しよう。
対照的に、欧州中銀(ECB)は長期金利上昇への強い警戒を示している。3月のECB理事会では、次の四半期(4-6月期)にかけて、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)による資産購入を加速することを決定。新型コロナ感染第3波による景気回復の遅れが懸念されるなか、米国に連動する長期金利上昇を抑制する姿勢を明確にした。スタッフ経済見通しでは、2021年の一時的なインフレを除けば、2023年まで実質GDP成長率、消費者物価指数上昇率は昨年12月時点の見通しが概ね据え置かれ、依然として慎重な景気認識が示されている。
この結果、3月以降、米独長期金利の連動性が崩れており、長期金利差が拡大し、ドル高ユーロ安が進行している。いずれも米欧の金融政策姿勢の乖離に起因するため、筆者は、景気回復とともにECBが次の対応が示すまで、この傾向は続きやすいと考えている。
*1 詳細はPRESTIA Insight 2021.03.29「一部の新興国中銀は、3月に利上げサイクルを開始へ」