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ドル高の物差し

2021-03-31

■ 米景気回復ペースの加速期待に、ドル円は1年ぶりに110円の大台に迫る

■ 米長短金利差に後ずれするドルインデックスの方向感にも注目


   本日のアジア市場で、ドル円は昨年3月26日以来の高値となる110円に迫るドル高、円安が進行している。米大統領就任後100日まであと1カ月に迫るなか、バイデン米大統領が新型コロナウイルスワクチンの接種目標を引き上げたほか接種対象を拡大。また、3-4兆ドル規模のインフラ投資計画を31日に公表することを明らかにし、米景気回復ペースが加速するとの期待が高まった。市場では、月末、期末、年度末に絡む実需売買や、米ヘッジファンドの取引を巡る大手金融機関の損失への警戒感がドル買いを促しているとの見方もある。
   ドル円の上昇は、株高を背景とする円安進行に伴うクロス円の騰勢や、新型コロナウイルスワクチンの接種中断?遅延を受けたユーロ圏の景気停滞を懸念したユーロの反落、など複合的要因が影響した。ただ、ユーロ円や豪ドル円などクロス円は足元で勢いを欠いており、円安頼みの上昇は見込みづらくなっている。一方、主要新興国通貨では、中銀が利上げに舵を切ったトルコリラとブラジルレアルの急落が目を引くが、インドルピー、メキシコペソ、南アランドに目立った動きはみられない。物価上昇圧力が高まるメキシコやインドなどの当該国通貨が底堅さを示すかどうか、ドル高や円安の持続性を見極めるうえで耳目を集めよう。
   気掛かりなことは、ドルインデックスが米長短金利差拡大に追い付いていないこと。過度なリスクオンやリスクオフでなければ、双方の相関性は高いと判断される。年初来、米2年債と10年債利回り格差は0.8%から1.6%まで拡大したが、ドルインデックスの上昇は89台後半から92台後半にとどまる。テクニカルには、94台後半へ上昇すれば「鍋底」のパターンが完成し、一段高の可能性が強まるとみている。他方、ドルインデックスの上昇はユーロ安の裏返しであることに鑑みれば、ユーロドルが昨年11月安値1.1602ドルを割り込み、心理的節目の1.15ドルや同3月高値1.1492ドルに向かうこともドル高の条件の一つといえそうだ。
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