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金利上昇よりも警戒すべき懸念材料が浮上しつつある

2021-03-26

■ 米長期金利上昇は一服しつつあるが、より本質的な懸念材料に市場参加者の目が向き始めたか

■ 現時点で過度な悲観は不要だが、慎重に各国の感染拡大状況などを見極める必要があろう


   先週開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では直近の米長期金利上昇を抑制する具体策は示されず、その後、米連邦準備理事会(FRB)が大手行に対する資本規制である補完的レバレッジ比率(SLR)の緩和措置を予定通り3月末で終了すると発表し、大手行が保有する米国債を売却することで米国債利回りに上昇圧力がかかるとの懸念も浮上。こうしたなか、米10年国債利回りは約1年1カ月ぶりの高水準となる1.7%台半ばを付ける場面もあった。しかし、24日には一時1.5%台後半まで低下しており、今週に入って上昇一服となりつつある。
   2月中旬以降、米長期金利の急ピッチな上昇を受けて株式市場が動揺する場面が目立っており、その観点からは大きな懸念材料がいったん後退したといえよう。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界景気の先行き不透明感がリスク回避的な米国債買い(利回り低下)を誘った面もあり、依然、株式市場の先行きを楽観視はできない。昨夏以降の主要国株の上昇は1株当たり利益(EPS)の改善に伴うもので、「経済正常化に伴い今後もEPSが増加基調をたどる」との見方が今後の株高シナリオの大前提である。景気回復局面において、ある程度の金利上昇は避けられない。そのペースや水準次第ではあるが、2%を下回る米10年国債利回りは過去を振り返っても低位で、企業業績の圧迫などを心配する水準ではないだろう。米国以外の主要国についても同様の見方でよいと考える。一方、景気見通しの下振れは、予想EPSの下方修正に伴う株価調整に繋がりやすく、警戒が必要であろう。
   新型コロナの感染は拡大と縮小を繰り返してきたが、そうしたなかで世界景気の回復が進んできたことを踏まえれば、現時点で株高シナリオを修正する必要はないとみている。ただ、世界全体では新型コロナの新規感染者数が2月中旬頃からはっきりと増加に転じてきており、景気回復ペースが鈍化するとの懸念は拭えず、当面は慎重に各国の感染拡大状況などを見極める必要があろう。また、株式市場を見通すうえで、より本質的な懸念材料に市場参加者の目が向き始めた可能性があることは認識しておきたい。

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